
本家の墓じまいの進め方
誰が決める・親族の合意・費用分担をやさしく解説
【2026年7月更新】
本家のお墓を墓じまいしようと考えているけれど、親族にどう切り出せばいいのか、そもそも自分が動いていいのか迷って、ここにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
本家=先祖代々のお墓は、分家を含む親族みんなに関わるもの。
だからこそ「誰が決めるのか」「独断で進めて揉めないか」という不安がついてまわります。
本家のお墓が難しいのは、自分ひとりの持ち物ではないという点です。
分家や遠い親戚まで含めた一族が「自分たちの先祖の墓」と感じているため、勝手に動くと角が立ちやすく、かといって誰も動かなければ管理する人がいないまま荒れていってしまう。
この「動きにくさ」こそが、本家の墓じまい特有の悩みです。
けれども、進め方には正しい順番があります。
順番さえ押さえれば、実家を離れた立場からでも、独断だと思われずに動き出すことができます。
この記事では、独断にならず・親族との関係を壊さずに進められるように、本家の墓じまいの手順を3つのステップに整理してお伝えします。
読み終えるころには、まず何から確認すればいいか、次に誰へどう声をかければいいか、そしてどこへ相談すればいいかが、具体的に見えているはずです。
この記事を読んで分かること
- 動き出す前に確かめたい名義人の調べ方
- 親族へ角を立てない切り出し方
- 費用の目安と分担の決め方
- 役所とお寺と石材店の相談順
ぜひ最後までお読みください!
目次
本家の墓じまいは「祭祀承継者の確認」から始める

本家の墓じまいを進めようとするとき、最初にぶつかる疑問が「誰が動いていいのか」です。
費用をどうするか、お寺にどう伝えるか、という具体的な話の前に、まず「この墓じまいを主導する立場にあるのは誰か」を整理しておくことが、後のトラブルを防ぐ最大の出発点になります。
その答えを出すために最初に確認すべきなのが、祭祀承継者という存在です。
祭祀承継者とは何か・誰がなれるか
祭祀承継者とは、お墓や仏壇・位牌などの「祭祀財産」を受け継ぐ人のことです。
民法第897条に定められており、祭祀承継者はお墓の管理や墓じまいの手続きを進める際に、中心的な役割を担う立場とされています。
祭祀承継者になれるのは、特定の続柄に限られているわけではありません。
法律上は次の順序で決まります。
| 優先順位 | 誰が承継者になるか |
| 1番目 | 亡くなった方が指定した人(遺言や生前の指定) |
| 2番目 | 地域や家の慣習で決まる人(長男が引き継ぐ慣習など) |
| 3番目 | 1・2で決まらないとき、家庭裁判所が定める人 |
つまり、必ずしも長男や戸主でなければならないという決まりはありません。
地域の慣習が優先されることが多いため「本家の墓は長男が継ぐもの」という意識が根強い地域もありますが、法律上は誰が祭祀承継者になっても構いません。
嫁いだ娘でも、遠方に暮らす親族でも、承継者になること自体は可能です。
また、祭祀承継者は原則として一人が引き継ぐものとされ、複数人が対等に共同で承継するかたちは想定されていません。
だからこそ「本家の墓をこれからどうするか」を話し合う前に、まず承継者が一人に定まっているかどうかを確かめておくことが大切です。
なお、祭祀承継者になったからといって、必ずお墓を維持し続けなければならない義務があるわけではありません。
承継したうえで墓じまいを選ぶことも、法律上まったく問題のない選択です。
「継ぐ=ずっと守り続けなければならない」と思い込む必要はない、という点は、本家の墓に向き合ううえで知っておくと気持ちが軽くなる事実です。
重要なのは、墓じまいの手続きを進める際には、この祭祀承継者が書類上の申請者になるという点です。
役所への改葬許可申請も、お寺への申し出も、石材店への撤去依頼も、祭祀承継者が窓口となって動くことになります。
逆に言えば、祭祀承継者でない人が独断で動こうとすると、後から「なぜ相談なしに進めたのか」と揉める原因になります。
あなたが実家を離れて暮らしている立場であれば、まず「現在の祭祀承継者が誰か」を確認することが、動き出すための正しい第一歩です。
祭祀承継者が兄や姉であれば、あなたは「一緒に進める協力者」として動くことができます。
祭祀承継者がはっきりしない場合は、親族で話し合って決める必要がありますが、それもまた大切な手順の一つです。
墓じまいの手続き全体の流れについては、墓じまい完全ガイド|費用相場や手続きの流れを全て解説で整理されています。
全体像を先につかんでおくと、親族への説明もしやすくなります。
名義人の確認の仕方・わからない時の探し方
「祭祀承継者が誰かわからない」という状況は、珍しくありません。
親が高齢になり、お墓の管理を誰がしているのかが曖昧になっているケースは多くあります。
まずは次の方法で確認を進めてみてください。
- お寺・霊園に問い合わせる:
お墓がお寺の墓地や霊園にある場合、管理事務所に「墓地使用契約の名義人」を確認できます。
この名義人が実質的な祭祀承継者であることがほとんどです。
お墓の所在地・区画番号・故人の氏名を手元に用意しておくとスムーズです。 - 地元に残る家族・親族に確認する:
兄姉や母など地元に残る親族に「お墓の名義は誰になっているか知っているか」と聞いてみる方法も有効です。
「名義を確認したい」という入り口は、「墓じまいしたい」という直接的な切り出し方よりも、受け取られ方がずっとやわらかくなります。 - 墓地使用許可証などの書類を探す:
実家に「墓地使用許可証」や「永代使用許可証」が保管されていることがあります。
これらには名義人の氏名が記載されており、祭祀承継者を特定する手がかりになります。
帰省した際に、仏壇の引き出しや重要書類の保管場所を確認してみてください。
お墓の管理者が誰かを調べる具体的な方法は、お墓の管理者が誰か調べる方法|上手な調べ方と確認後の進め方を解説に詳しくまとまっています。
遠方にいながら確認を進めたい場合の参考になります。
祭祀承継者が明確でない状態でも、墓じまいの準備を一切できないわけではありません。
まず「誰が名義人かを確認する」という行動を取ること自体が、墓じまいの最初の一歩です。
確認の過程で地元の親族と連絡を取ることになり、それが自然な形での「相談の入り口」になります。
名義が誰になっているかを確認する——それだけで、あなたは独断でも傍観でもなく、正しい立場から動き出したことになります。
費用より先に親族へ一声かけるのが独断を防ぐ順序

祭祀承継者が誰かを確認したら、次にすべきことは費用の調査でも、お寺への連絡でもありません。
親族への一声です。
この順番を間違えると、どれだけ誠実に動いても「勝手に話を進めた」と受け取られるおそれがあります。
本家の墓は分家を含む親族みんなに関わるものだからこそ、費用や手続きの話を持ち出す前に「一緒に考えたい」という姿勢を先に示すことが、独断と見なされないための最大の防御策になります。
最初の一声で伝えること・避けること
最初の一声で大切なのは、「決定事項を伝える」のではなく「相談を始める」という姿勢を伝えることです。
伝えるべきことは次の3つです。
- お墓の管理が今後難しくなりそうだ、という現状の共有
- 「どうするか一緒に考えたい」という意思
- 「すぐに決めなくていい、まず話し合いたい」という余裕のある姿勢
たとえば「お墓の名義を確認したら〇〇さんの名前になっていたんだけど、今後の管理のこと、一度みんなで話し合えないかな」という切り出し方は、相談の入り口として受け取られやすい伝え方です。
墓じまいという言葉を最初から使う必要はありません。
「お墓のこれから」について話し合いたい、という入り口で十分です。
逆に、最初の一声で避けたいことも3つあります。
最初の一声で避けたい3つのこと
- 費用の話を最初に持ち出す(「分担させられる話だ」と身構えられます)
- お寺や石材店に先に連絡して既成事実をつくる(反対する親族が引き返せないと感じます)
- 結論を急かす(こちらの都合だけで進めていると受け取られます)
費用の話は、全員が「墓じまいを進める方向で考えよう」という合意ができてから、次のステップで行うのが正しい順番です。
お寺への連絡や石材店への相談も、親族への一声より先に進めないようにします。
本家の墓をどうするかは、関わる全員にとって重い決断ですから、最初の一声はあくまでも「話し合いの場を設けることへの同意」を求めるものにとどめておくと安心です。
親族間で角を立てずに話を進めるコツについては、墓じまいの交渉のコツ|お寺と親族に角を立てない進め方にまとまっています。
一声をかける前にあわせて読んでおくと、切り出し方の具体例がつかめます。
離れた立場からでも連絡しやすい声のかけ方
実家を離れて暮らす立場から、いきなり「お墓の話をしたい」と連絡するのは気が重い、という方も多いでしょう。
「遠方の家族が口を出すのか」と思われないか、という不安はよくわかります。
ただ、連絡のタイミングと伝え方を少し工夫するだけで、受け取られ方は大きく変わります。
- 帰省・法要のタイミングを使う:お盆・お彼岸・年忌法要など、親族が自然に集まる機会は、お墓の話を切り出す最も自然なタイミングです。「せっかく集まったから、お墓のこれからについて少し話せないか」という入り口は、唐突な印象を与えません。
- 電話より先にメッセージで「話したい」と伝える:いきなり電話で切り出すと、相手が心の準備のできていない状態で反応することになります。まず「お墓のことで一度相談したいことがある」とメッセージで伝えてから電話するほうが、相手も落ち着いて聞く準備ができます。
- 「私が決めたいわけではない」という姿勢を先に示す:「地元にいる〇〇さんを中心に考えてほしい。私も一緒に考えたいので、話し合いの場に加えてほしい」という言い方は、主導権を相手に渡しながら関わる意思を伝える、最もバランスのよい姿勢です。遠方の家族が勝手に動いているという印象を払拭しつつ、真剣に考えてくれているという安心感を与えられます。
念のため、最初の一声をかけた日時・内容・相手の反応を、メモやメッセージの履歴として残しておくと安心です。
後から「相談なしに進めた」と言われた場合に、「この日にこう連絡した」という事実を示せることが、無用なトラブルを防ぐ手立てになります。
親族への一声は、墓じまいを「自分だけの問題」から「みんなの問題」に変える、最も大切な一手です。
費用と手続きの全体像を先につかむと相談が進む
親族への一声をかけ、話し合いの場が設けられたとき、あなたが「費用の目安と手続きの流れ」をある程度把握していると、話し合いの質がまったく変わります。
何も知らない状態で集まると、話し合いは「で、いくらかかるの?」「誰がお寺に連絡するの?」という疑問の応酬になりがちです。
一方、全体像をつかんでいる人が一人いるだけで、話し合いは感情論ではなく現実的な相談として進みやすくなります。
全体像を先につかんでおくことは、「仕切ろうとしている」のではなく、「みんなが判断しやすい状況をつくる」ということです。
墓じまいの費用の目安と分担の考え方
墓じまいにかかる費用は内容によって大きく異なりますが、一般的には次の項目が発生します。
| 費用の項目 | 目安 |
| 魂抜き(お墓に宿った魂を抜く供養)のお布施 | 3万円〜10万円程度 |
| 墓石の撤去・解体工事費(1基あたり) | 10万円〜30万円程度 |
| 離檀料(お寺との関係を終える際に包む費用) | 0円〜30万円程度 |
| 新しい納骨先の費用 | 納骨先の種類によって異なる |
これらを合算すると、墓じまい全体にかかる費用は20万円〜100万円程度が一つの目安です。
ただし、金額は条件によって大きく変わります。
たとえば墓石の撤去費は、お墓の区画が広いほど、また重機が入りにくい山間部や高台にあるほど高くなる傾向があります。
離檀料には明確な相場がなく、お寺との付き合いの長さや地域の慣習によって幅が出ます。
新しい納骨先の費用も、永代供養墓なら5万円〜30万円程度、樹木葬なら10万円〜80万円程度、納骨堂なら20万円〜100万円程度と、選ぶ形式でかなり差があります。
話し合いの段階では、正確な金額まで出す必要はなく「おおよそこのくらいの規模になる」という共通認識を持つだけで十分です。
なお、自治体によっては、墓じまいや遺骨の引っ越しにかかる費用の一部を補助する制度が設けられている場合があります。
すべての市区町村にあるわけではありませんが、現在お墓がある自治体の窓口やホームページで「墓じまいの補助」があるかを確認しておくと、費用負担を軽くする材料として親族に示せることがあります。
本家の墓じまいで最も揉めやすいのが、費用の分担です。
法律上、墓じまいの費用を誰が負担すべきかという明確な決まりはありません。
一般的には、祭祀承継者が主に負担する・関係する親族で均等に分担する・出せる人が多めに出して残りを分担する、といった考え方が取られています。
費用分担で揉めないために共有したい前提
- 「費用を誰が払うか」に法律上の決まりはない
- 分担の方法は一つではなく、話し合いで決めるもの
この2点を話し合いの前に共有しておくだけで、「長男が全部払うべき」「分家は関係ない」という思い込みによる感情的な対立を防ぎやすくなります。
費用を抑えたい場合は、複数の石材店から見積もりを取って比較することが効果的です。
見積もりの取り方と比較のポイントは、墓じまいの見積りは30万円安くできる!後悔なく進める相見積のススメで解説されています。
役所・お寺・石材店へ相談する順番と全体の流れ
墓じまいの手続きには、役所・お寺・石材店という3つの相談先が登場します。
この3つには相談する正しい順番があり、間違えると手続きが滞ったり、余計なトラブルが生じたりすることがあります。
まず最初に決めるべきなのは、遺骨の新しい納骨先です。
永代供養墓・樹木葬・納骨堂・手元供養など選択肢はいくつかあります。
新しい納骨先が決まらないと、役所の手続きに必要な書類が揃わないため、何よりも先に方向性だけでも決めておく必要があります。
選択肢と費用の比較は、墓じまい後の納骨先はどこにする?6つの選択肢と費用・進め方でまとまっています。
新しい納骨先の目処が立ったら、現在のお墓がある市区町村の役所に改葬許可申請を行います。
これは遺骨を別の場所へ移すために必要な行政手続きで、祭祀承継者が申請者となります。
必要書類は自治体によって異なりますが、一般的には次の3点が求められます。
改葬許可申請書(現在お墓がある役所で入手)、埋葬証明書(今のお墓の管理者やお寺が発行)、新しい納骨先の受け入れ証明書(移す先の霊園やお寺が発行)です。
遠方のお墓の場合、役所の窓口へ出向かなくても、申請書を郵送で取り寄せて手続きを進められる自治体も多いため、平日に帰省できなくても準備は進められます。
役所への手続きと並行して、現在のお墓があるお寺への連絡を進めます。
お寺には、墓じまいをしたい旨と理由を丁寧に伝え、魂抜きの日程調整と、お寺との関係を終える手続きを進めます。
お寺とのやり取りでトラブルが起きやすいのは、「墓じまいを決めました」という事後報告から始めてしまうケースです。
住職の立場からすると、長年お付き合いのある家から突然「やめます」と告げられることになり、感情的に受け取られることがあります。
その結果、お布施をめぐる話し合いが難航したり、埋葬証明書の発行が滞ったりして、手続き全体が止まってしまうこともあります。
だからこそ、事後報告ではなく「ご相談したいことがある」という形で切り出すことが、話し合いを穏やかに進めるコツです。
ここで注意が必要なのが離檀料です。
法律上、離檀料を支払う義務はありませんが、長年お世話になったお寺への感謝の気持ちとして包む慣習があります。
金額に決まった相場はないため、不安な場合は「皆さんはどのくらい包まれていますか」と率直に尋ねてみるのも一つの方法です。
改葬許可証が発行され、お寺との日程が決まったら、石材店に墓石の撤去・解体工事を依頼します。
石材店は複数社から見積もりを取ることが費用を抑えるうえで有効です。
同じお墓でも業者によって数万円から数十万円の差が出ることがあるため、一社だけで即決せず、二〜三社を比べてから決めると安心です。
遠方にお墓がある場合でも、現地対応が可能な業者に依頼できます。
撤去工事や魂抜きの当日にどうしても立ち会えないときは、代理で対応し、作業前後の写真を報告してもらえるサービスを用意している業者もあります。
実家から離れて暮らしていて何度も現地へ通えない場合は、こうした写真報告のある業者を選んでおくと、立会いの負担を抑えながら進められます。
役所・お寺・石材店への流れを把握しておくことで、親族との話し合いで「次に何をすべきか」を具体的に示せるようになります。
これは「仕切ること」ではなく、「全員が判断しやすい状況をつくること」です。
全体の流れを事前につかんでいる人が一人いるかどうかで、話し合いが「どうしたらいいか分からない不安の場」になるか、「何をどの順番で進めるかを決める具体的な相談の場」になるかが分かれます。
まず名義人を確認し、親族へ相談を持ちかけよう
本家の墓じまいは、一族に関わる大きな決断だからこそ、進める順番が何より大切です。
最初にお墓の名義人(祭祀承継者)が誰かを確認し、次に費用や手続きの話より先に親族へ「一緒に考えたい」と一声をかけ、そのうえで費用の目安と手続きの全体像をつかんでから話し合う。
この3つの順番を守れば、独断でも無責任でもなく、親族との関係を壊さずに進めていけます。
順番を守ることそのものが、遠方に暮らす立場から動くときの一番の後ろ盾になります。
まず取りかかれるのは、お墓の名義が誰になっているかを確認することです。
名義がはっきりすれば「誰が中心になるか」が決まり、そこから親族への相談が自然に始まります。
焦って一度にすべてを決める必要はありません。
名義を確かめ、親族に相談を持ちかけ、費用と手続きを調べる——この順で一つずつ進めれば、あなたのペースで着実に前へ進めます。
判断に迷うときや、遠方でお墓の手続きを進めにくいときは、墓じまいに慣れた専門の窓口に相談してみるのも一つの方法です。
参考リンク:


