
相続放棄したら墓じまいはしなくていい?
義務と放置後の注意点を解説
【2026年7月更新】
相続放棄したら、実家の墓じまいはもうしなくてもいいのだろうか——そう確かめたくて調べている方も多いのではないでしょうか。
正直なところ、墓じまいにはお金も手間もかかります。
「できることなら、自分がやらずに済ませたい」と感じるのは、決して薄情なことではありません。
遠方の実家のお墓ともなれば、通うだけでも大変で、まして手続きや費用まで背負うとなると、気が重くなって当然です。
ただ同時に、「このまま放っておいて、あとで困ることにならないか」という不安も消えないのだと思います。
先に、いちばん気になる点にお答えします。
墓じまいをする法的な義務は、そもそも誰にもありません。これは相続放棄をしてもしなくても、同じです。
相続放棄をして、なおかつお墓を引き継ぐ立場(祭祀承継者)にもならなければ、墓じまいの費用や手続きを自分が負う必要はないのです。
ただし、気をつけたいことが一つあります。
「相続放棄をすれば、お墓の問題も自動的に消える」わけではないという点です。
お墓は相続財産とは別のあつかいになるため、放棄しただけでは片づきません。
だからこそ、「しなくてもいい」と判断する前に、しなかった場合に何が起きるのかを知っておくと安心です。
この記事では、相続放棄をした人に墓じまいの義務が生じるのか、墓じまいをしなくてもいいのはどんなときか、しないままにするとお墓はどうなるのか、そしてお墓の負担を引き受けたくないときにできることまでを、順にお伝えします。
読み終えるころには、「うちの場合は、するべきか・しなくてよいか」を落ち着いて判断できるようになっているはずです。
この記事を読んで分かること
- 相続放棄しても墓じまいをする義務がない理由
- 墓じまいをしなくてもいいのはどんなときか
- 墓じまいをしないままだとお墓はどうなるか
- お墓の負担を引き受けたくないときにできること
ぜひ最後までお読みください!
目次
相続放棄しても墓じまいをする義務はない

まず、いちばん大切な結論からお伝えします。
墓じまいは、法律で「しなければならない」と決められたものではありません。
相続放棄をした人にも、していない人にも、墓じまいをする義務はないのです。
「相続放棄をしたら、責任として墓じまいまでやらされるのでは」と身構えている方もいますが、そうではありません。
まずはここで、少し肩の力を抜いていただければと思います。
墓じまいをする法的な義務は、そもそも誰にもない
お墓を撤去して整理する「墓じまい」は、あくまで本人や家族が選んでする行為です。
「いつまでにやらなければいけない」「やらないと罰がある」といった決まりは、法律のどこにもありません。
そのため、相続放棄をしたからといって、急いで墓じまいをしなければならないわけではありません。
お墓を今後も守り続けるのか、整理するのか、それとも別の道を選ぶのか。
そこは自分たちで決められる部分です。
そもそも、お墓を維持し続けること自体も義務ではありません。
お墓の管理や供養は、法律で強制されているものではなく、その家の慣習や気持ちにもとづいて続けられてきたものです。
だからこそ、続けるのをやめて整理する「墓じまい」も、あくまで選択の一つであって、しなければ罰せられるようなものではないのです。
もう一つ押さえておきたいのは、相続放棄と墓じまいは、そもそも別々の話だということです。
相続放棄は「亡くなった方の財産(プラスもマイナスも)を受け取らない」という手続きであり、お墓をどうするかを決める手続きではありません。
「相続放棄をするなら、そのついでにお墓もきれいにしておかないといけないのでは」と考えて動き始める方もいますが、二つは切り離して考えてよく、義務として迫られているわけではない、とまず知っておくと気持ちが軽くなります。
相続放棄だけではお墓の問題は消えない
一方で、注意しておきたいことがあります。
「相続放棄をすれば、お墓のことも一緒に片づく」わけではない、という点です。
お墓・仏壇・位牌など、ご先祖の供養に関わるものは「祭祀財産(さいしざいさん)」と呼ばれ、民法897条で相続財産とは別のあつかいと定められています。
預貯金や土地・建物のような一般的な相続財産とは、法律上の扱いが根本から違うのです。
これが意味するのは、相続放棄をして「財産は受け取らない」と決めても、お墓に関する立場や役割は、それとは別のところで残り続けるということです。
「放棄したのだから、お墓のことも自動的に消えるはず」と思っていると、あとで「実は自分がまだ名義人のままだった」と気づくこともあります。
放棄で消えるのはあくまで財産の相続であって、お墓をどうするかは、放棄とは別に自分で向き合うことになる、と押さえておくと安心です。
相続放棄とお墓の関係を整理すると
- 墓じまいをする義務は、相続放棄の有無にかかわらず誰にもない
- お墓は相続財産の外にあるため、相続放棄をしても自動では片づかない
- だから「するか・しないか」は、義務ではなく自分の判断で決められる
つまり、相続放棄をしても「墓じまいをしなさい」と迫られることはない一方で、「放棄したからもう関係ない」と自動的に手が離れるわけでもありません。
お墓に関する権利や管理者の考え方をもう少し詳しく知りたい方は、墓じまいの権利は誰にある?家族の権利者と墓の管理者の違いを解説もあわせて読んでおくと、自分の立場が整理しやすくなります。
墓じまいをしなくてもいいのはどんなとき

「義務がないのは分かった。では、うちは本当にしなくてもいいのか」。
ここがいちばん知りたいところだと思います。
しなくてもよいかどうかは、「誰かがそのお墓を守り続けられるか」「自分が責任を負う立場にあるか」という、いくつかの条件で見えてきます。
ひとつずつ当てはめて考えると、あわてて動く必要があるのか、それとも急がなくてよいのかが、はっきりしてきます。
自分が「引き継ぐ立場」にならなければ負担は生じない
墓じまいの費用や手続きを負うのは、基本的にお墓を引き継いで管理する立場の人、つまり祭祀承継者です。
逆にいえば、自分がその立場を引き受けなければ、墓じまいの費用や手続きを負う必要は生じません。
祭祀承継者は、亡くなった方の指定・その家の慣習・家庭裁判所の判断という順で決まるとされていますが、「必ず長男が」「必ず相続放棄した人が」と決まっているわけではありません。
ほかに引き継ぐご親族がいるなら、その方に承継してもらう形も選べます。
大事なのは、相続放棄をしても祭祀承継者になれる一方で、なることを強制されるわけでもない、という点です。
相続財産を受け取らないと決めた人が、お墓だけは引き継ぐこともできますし、逆にお墓にも関わらないという選び方もできます。
お墓は相続財産の外にあるため、相続放棄の有無とは切り離して考えられるのです。
相続放棄をして、なおかつ自分が祭祀承継者にもならないのであれば、「お墓のことは自分の負担にはならない」という状態をつくることはできます。
ただしその場合は、ほかに引き継ぐ人がいるのか、誰も引き継がないならお墓は最終的にどうなるのか、という点まで見ておくことが大切です。
ひとりでお墓を抱えるかどうか迷っている方は、独身の墓じまいの進め方|ひとりでの手続き・費用・自分の行き先を解説も、立場の整理に役立ちます。
「しなくてよいケース」と「した方がよいケース」
とはいえ、「しなくてよい」と「しない方が安全」は別の話です。
次の表で、自分の状況がどちらに近いかを確かめてみてください。
| 急いでしなくてもよいケース | 早めに考えた方がよいケース |
| ほかに引き継ぐ親族がいて、管理を続けてくれる | 引き継ぐ人がおらず、管理する人がいなくなる |
| 自分が名義人・契約者ではない | 自分が墓地の名義人や契約者になっている |
| お墓を今後も守っていく方針で家族がまとまっている | 管理料の滞納が続き、放置状態になりつつある |
左側にあてはまるなら、あわてて墓じまいをする必要はありません。
逆に右側にあてはまる項目が多いほど、「しない」を選んだときのリスクが大きくなります。
とくに大きな分かれ目になるのが、「自分が墓地の名義人(契約者)になっているかどうか」です。
名義人になっていると、管理料の支払いや今後の連絡の窓口が自分に集まります。
反対に、自分が名義人でなければ、放置による費用や手続きの矢面に立つことは基本的にありません。
自分の立場がはっきりしないときは、まずお墓の名義がどうなっているかを確かめてみてください。
確認の手がかりになるのは、次のようなものです。
- 墓地やお寺から届く管理料の請求書・お知らせに書かれた宛名
- 墓地の使用許可証(永代使用許可証)に記載された使用者の名前
- 墓地の管理事務所やお寺に問い合わせて、現在の名義を確認する
名義が亡くなった方のままになっている場合、これから自分が引き継ぐのか、引き継がないのかで、その後の関わり方が変わってきます。
「しない」を選ぶにしても、自分がどの立場にいるかを知っておくことが出発点になります。
次の章で、放置を選んだときに具体的に何が起きるのかを見ていきます。
墓じまいをしないままだとお墓はどうなるのか
「しなくてもいい」と判断する前に、ぜひ知っておいてほしいのが、墓じまいをせず放っておいた場合に起きることです。
ここを知らないまま「しない」と決めてしまうと、あとで思わぬ形で困ることがあります。
「しなくてよい」と「放っておいてよい」は、似ているようで別の話です。
しなくてよい状況であっても、まったくの無関心で放置すると、次に挙げるようなことが起こりえます。
逆にいえば、これらを知ったうえで「それでも今は動かなくてよい」と判断できたなら、それは納得のいく選択になります。
管理されないお墓は無縁墓として撤去される
お墓は、管理料を払い、手入れを続けることで維持されています。
その管理が途絶え、連絡もつかない状態が続くと、墓地の管理者はそのお墓を「無縁墓」として扱う手続きに入ることがあります。
無縁墓とは、管理する人がいなくなったお墓のことです。
墓地の決まりや自治体の条例によって流れは異なりますが、一般的には、まず管理者が名義人や親族に連絡を試み、それでも連絡がつかない場合は、お知らせの掲示(公告)を一定期間おこないます。
その期間を経ても申し出がなければ、遺骨が取り出され、ほかの方の遺骨とまとめて納められるという形で扱われます。
| 放置が進む段階 | その時期に起こること |
| 管理料の滞納が始まる | 管理者から名義人へ督促の連絡が届く |
| 連絡がつかない状態が続く | お墓の前や掲示板などに公告が出される |
| 公告の期間が過ぎる | 遺骨が取り出され、ほかの遺骨とまとめて納められる |
つまり、誰にも知らされないまま、ご先祖の遺骨が別の場所へ移されてしまう、ということが実際に起こりえます。
「うちにかぎってそんなことは」と思いたくなりますが、引き継ぐ人がおらず遠方にお墓がある状況は、それ自体がこのリスクに直結しています。
しかも、こうした変化は遠方だと気づきにくく、問題が表に出たときにはかなり時間が経っていることも少なくありません。
名義や契約によっては費用を求められることもある
もう一つ知っておきたいのが、「しない」を選んでも費用の話が完全に消えるとはかぎらない、という点です。
- 自分が墓地の名義人・契約者だと、たまった管理料の支払いを求められることがある
- 無縁墓として撤去される際、名義人に撤去の費用が請求される場合がある
- お墓を大切に思う親族との間で、放置をめぐって気持ちのすれ違いが起きることがある
こうしたことが起こるかどうかは、自分がお墓の名義人や契約者になっているか、ほかに関わる親族がいるかによって変わります。
名義人でなく、ほかに引き継ぐ親族がいる場合は、放置による費用が自分に回ってくる心配はほとんどありません。
逆に、自分が名義人のまま連絡を放置してしまうと、たまった管理料や撤去の費用を求められることがあります。
「関わりたくないから放っておく」と決める前に、自分がどの立場にいるのかを一度確かめておくと安心です。
もう一つ見落としがちなのが、お金の問題だけでなく、親族との気持ちのすれ違いです。
ご先祖のお墓を大切に思ってきた親族にとって、何の相談もなく放置されることは、強い抵抗を感じる出来事になりえます。
あとで「勝手に放っておいた」と受け取られてしまうと、関係がこじれてしまうこともあります。
だからこそ、「しない」を選ぶ場合でも、関わる可能性のある親族には一言伝えておくと、余計な行き違いを防げます。
判断に迷うトラブルが絡みそうなときは、その墓じまいトラブル、弁護士は必要?3つの判断基準と相談窓口を解説が、相談先を選ぶ目安になります。
お墓の負担を引き受けたくないときにできること
「やっぱり、自分はお墓の負担を負いたくない」。
そう思ったときにも、取れる方法はあります。
放置してリスクを抱えるのではなく、負担を負わない形で区切りをつける道です。
まずは「引き継ぐ立場」を引き受けないことから
いちばんの基本は、自分が祭祀承継者になることを引き受けないことです。
ほかに引き継げるご親族がいるなら、その方に承継してもらえないかを相談してみる。
誰が引き継ぐのかを、うやむやにせず家族で話し合っておくことが大切です。
このとき、いきなり「自分はやらない」と切り出すよりも、「お墓を今後どうするか、一度みんなで話したい」と、現状の共有から始めると角が立ちにくくなります。
「遠くて管理が難しい」「このまま放っておくのは心配」という現状を正直に伝えることで、相手も「たしかにそうだね」と受け止めやすくなります。
話し合いの場をつくること自体が、あとのトラブルを防ぐいちばんの近道です。
親族やお寺への話の進め方は、墓じまい交渉・話し方のコツ|お寺や親族にカドを立てない進め方が具体的で参考になります。
相続人全員が放棄するなら相続財産清算人という道
「引き継ぐ人が誰もいない」「亡くなった方名義の土地にお墓があって、どう扱えばよいか分からない」という場合には、相続財産清算人(相続財産管理人)の選任という方法があります。
これは、相続人全員が相続放棄をした場合などに、残された財産を適切に管理・処分するために、家庭裁判所が選ぶ専門家の制度です。
お墓や土地に関わる判断を自分でしなくてよくなるため、負担を負わずに整理を任せられます。
自分で「これは触れていいのか」と一つひとつ悩む必要がなくなるのが、いちばんの利点です。
選任には家庭裁判所への申し立てが必要で、実務は弁護士や司法書士が担うのが一般的です。
申し立ての際に、清算人が業務にあたるための費用(予納金)をおさめるよう求められることがあり、時間も一定かかります。
手間や費用はありますが、「放置してリスクを抱える」のではなく「適法に、安全に区切りをつける」という点では、検討する価値のある方法です。
特に、相続人全員が放棄する予定がある場合や、名義が複雑で自分では判断しきれない場合に向いています。
困りごと別・相談先の目安
- 司法書士:相続放棄の申述書類の作成・提出、相続財産清算人の選任申し立てを頼みたいとき
- 行政書士:どうしても墓じまいを進める場合の、役所への改葬許可申請などを頼みたいとき
- 墓じまいの専門業者・相談窓口:撤去や新しい納骨先の手配まで、まとめて相談したいとき
どこに相談すればよいか迷うときは、「今いちばん困っていること」で選ぶと絞りやすくなります。
「相続放棄の手続きが正しくできているか不安」なら司法書士へ、「役所の手続きまで代わりに進めてほしい」なら行政書士へ、「お墓の撤去や新しい納骨先の手配までまとめてお願いしたい」なら墓じまいの専門業者へ、という具合です。
関わりたくないという気持ちも含めて正直に伝えれば、その立場に合った進め方を一緒に考えてもらえます。
自分ひとりで「する・しない」を抱え込まず、早めに専門家へ状況を伝えるだけでも、漠然とした不安が具体的な選択肢に変わります。
「まだ何も決まっていない」という段階でも、相談してみて構いません。
相続放棄には、自分が相続人になったと知った日から原則3か月という期限があります。
迷っているうちに時間だけが過ぎると、選べる道が狭まってしまうこともあるからです。
早めに動くことが、結果として自分の選択肢をいちばん多く残すことにつながります。
墓じまいをするか、まず自分の立場を確認しよう
ここまで、相続放棄をしても墓じまいをする義務はないこと、しなくてもよいのはどんなときか、しないままだとお墓はどうなるのか、そして負担を引き受けたくないときにできることをお伝えしてきました。
大切なのは、「しなければいけないから」ではなく、「しないと何が起きるか」を知ったうえで自分で決めることです。
ほかに引き継ぐ人がいて管理も続くなら、急いで墓じまいをする必要はありません。
反対に、引き継ぐ人がおらず自分が名義人なら、放置は無縁墓や費用の請求につながることがあります。
まず確かめたいのは、自分がお墓の名義人や祭祀承継者になっているかどうかです。
そのうえで、負担を負いたくないなら祭祀承継を引き受けない方法を、誰も引き継がないなら相続財産清算人という道を検討する。
判断に迷う点が残るなら、司法書士や行政書士、らくサポのような墓じまいの相談窓口に、早めに声をかけてみてください。
焦って結論を出すのではなく、自分の状況に合った答えを選ぶことが、いちばん後悔の少ない進め方になります。
参考リンク:


