
墓じまいの権利は誰にある?
家族の権利者と墓の管理者の違いを解説
【2026年7月更新】
墓じまいをしようと思ったとき、家族の中で墓じまいを進める権利は誰にあるのか、そして墓石をどこまで撤去するのか(範囲)は誰が決めるのかが分からず、調べ始めていませんか。
「自分は遠くに住んでいるから、お墓のことは地元の家族に任せるしかない。でも、勝手に決めていいのだろうか」——そんな後ろめたさを、心の隅に抱えてきた方は少なくありません。
かといって、地元で管理している家族に墓じまいを切り出すのも、なんとなく言い出しにくいものです。
実際、これまでのご相談でも「墓石だけを外すつもりでいたら、基礎や外柵まで解体して更地に戻す必要があると言われ、見積もりが思っていたより高くなった」というお声をいただきます。
誰が墓じまいを決められるのか、そしてどこまで撤去するのかを知らないまま話を進めると、あとで慌てることになりかねません。
結論からお伝えします。
墓じまいを進める権利は、家族の中では「お墓の名義を引き継いだ人(祭祀承継者)」にあります。
そして、墓石をどこまで撤去するかという範囲を決める権利は、お墓が置かれている「墓地の管理者」にあります。
この2つの「誰が決めるのか」を知るだけで、自分がどこまで動いていいのか、何を確認すればいいのかが、ぐっと整理できます。
この記事では、家族の中で墓じまいを進められるのは誰か、撤去の範囲を決めるのは誰か、権利があっても一人では進められない理由、遠方や嫁いだ立場でも関わるための整理の仕方まで、難しい言葉をできるだけ使わずに順番に説明します。
読み終えるころには、誰に何を確認すればいいのかがはっきり見えているはずです。
この記事を読んで分かること
- 墓じまいを進める権利を持つ家族(祭祀承継者)
- 祭祀承継者の決まり方と名義の確認先
- 撤去範囲を決める権利を持つ墓地の管理者
- 墓地の種類ごとの管理者と確認すべきこと
ぜひ最後までお読みください!
目次
墓じまいを進める権利は家族の中で祭祀承継者にある

まず押さえておきたいのが、「家族の中で、誰が墓じまいを進めていいのか」という点です。
家からお墓が近いから、長男だから、という理由だけで決められるわけではありません。
墓じまいを進める権利を持つのは、お墓を引き継いだ「祭祀承継者(さいしじょうけいしゃ)」と呼ばれる一人です。
お墓を引き継いだ祭祀承継者が手続きの中心になる
祭祀承継者とは、先祖のお墓や仏壇などを引き継ぎ、その管理を担う人のことです。
お墓の管理・維持・墓じまいといった手続きは、この祭祀承継者が中心になって進めるものとされています。
その背景には、お墓の特別な性質があります。
お墓を建てるときに払うお金は、土地そのものを買う代金ではなく、その区画をお墓として使わせてもらう「永代使用権」を得るための費用です。
土地の持ち主はあくまでお寺や霊園で、名義を引き継いだ人が、その使用権にもとづいてお墓を管理します。
だからこそ、墓じまいを進める権利も、この名義を引き継いだ祭祀承継者にあるのです。
民法897条では、祭祀承継者は次の財産(祭祀財産)を引き継ぐと定められています。
- 系譜(家系図など家族の記録)
- 祭具(位牌・仏壇・神棚など)
- 墳墓(お墓そのもの)
これらの祭祀財産は、預貯金や不動産のように兄弟で分け合うことができず、原則として誰か一人がまとめて引き継ぎます。
お墓を半分ずつ持つことはできないため、「お墓は誰が継ぐのか」を家族の中で一人に定める必要があり、その一人が墓じまいを進める中心になります。
お墓の全体像や手続きの流れも先に知っておきたい方は、墓じまい完全ガイド|費用相場や手続きの流れを全て解説をあわせてご覧いただくと、権利の話と手続きの流れを一度に整理できます。
継ぐ人は指定・昔からの慣習・家庭裁判所の順で決まる
では、家族の中で誰が祭祀承継者になるのでしょうか。
民法897条では、次の順番で決まると定められています。
| 順番 | 決まり方 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 亡くなった方の指定 | 生前に「この人に継いでほしい」と指定した意思が最優先。遺言によることが多いが、口頭が認められる場合もある |
| 2 | 昔からの慣習 | 指定がない場合、地域や家の慣習に従う。「長男が継ぐ」「喪主が継ぐ」など。ただし強制されるものではない |
| 3 | 家庭裁判所の指定 | 指定も慣習もなく話し合いがまとまらないとき、家庭裁判所が決める。最終手段で、実際は話し合いで解決することが多い |
大切なのは、「お兄さんがずっと管理してきたから」「長男だから」「地元に住んでいるから」といった理由は、それだけでは決定的な根拠にならないという点です。
かつては「お墓は長男が継ぐもの」という慣習が根強くありましたが、現在は指定がない限り、他家に嫁いだ娘や、甥・姪、故人の兄弟姉妹など、誰が継いでも構わないと考えられています。
遠方に住んでいても、嫁いでいても、指定されていれば祭祀承継者になれるのです。
また、祭祀承継者が代わったときは、その事実をお寺や霊園にも届け出て、名義を変更しておくことが大切です。
名義が亡くなった方のままになっていると、いざ墓じまいを進めようとしたときに「本当にあなたが承継者ですか」と確認が入り、話が止まってしまうことがあります。
名義変更の方法は霊園やお寺によって異なるため、管理者に問い合わせて必要な書類を確認しておくと安心です。
自分や家族の誰が名義を引き継いでいるか分からないという場合は、まずお墓の管理者に問い合わせて確認するのが最初の一手です。
名義の調べ方は、お墓の管理者が誰か調べる方法|上手な調べ方と確認後の進め方を解説で具体的に確認できます。
墓じまいの範囲を決める権利は墓地の管理者にある

家族の中で墓じまいを進める人が決まっても、もう一つ知っておきたい「権利」があります。
それは、墓石をどこまで撤去するのか、という範囲を決める権利です。
ここを勘違いしていると、見積もりが想定より大きくふくらんで驚くことになります。
墓石だけのつもりが基礎や外柵まで及ぶことがある
墓じまいというと「墓石を外して運び出せば終わり」というイメージを持つ方が多いのですが、実際には撤去する範囲によって、作業も費用も大きく変わります。
撤去の対象になりうるものには、次のようなものがあります。
- 墓石本体(棹石・台石など、地上に見えている部分)
- 外柵(お墓の区画を囲む石の枠)
- 基礎(地中のコンクリート土台)
- カロート(遺骨を納める石室)や地中の構造物
「墓石だけを外すつもりでいたら、基礎や外柵まで解体して更地に戻すよう求められ、見積もりが倍近くになった」という話は珍しくありません。
なぜこうしたことが起きるかというと、どこまで撤去して返すかを決めるのは、お墓を使う側ではなく、区画を貸しているお墓の管理者だからです。
家族の間で「基礎は残して費用を抑えたい」と話し合って決めても、それがそのまま通るとは限りません。
管理者が「更地にして返すこと」を条件にしていれば、その基準に従う必要があります。
逆に、管理者が「基礎は残してよい」としている墓地であれば、墓石だけの撤去で費用を抑えられることもあります。
どちらになるかは家族の希望ではなく、管理者の決まりで変わるということです。
だからこそ、範囲を自分たちだけで決めつけず、管理者に確認することが欠かせません。
撤去の範囲は「更地にして返す」基準で管理者が定める
永代使用権は、お墓の区画を管理者から借りて使わせてもらっている権利です。
そのため、使用をやめる(墓じまいをする)ときには、管理者が定めた状態に戻して区画を返す必要があります。
多くの墓地では「更地にして返す」ことが原則とされており、その場合は墓石だけでなく、外柵や地中の基礎まで撤去して、次の人が使える更地の状態にすることが求められます。
この「元の状態に戻して返す」という考え方を原状回復といいます。
どの状態を「元に戻した」とみなすかは管理者の規約で決まっているため、同じ墓じまいでも、管理者によって撤去する範囲が変わります。
基礎を残してよい墓地もあれば、地中の構造物まですべて撤去して更地にするよう求める墓地もあります。
撤去する範囲が広がるほど工事の手間が増え、費用も上がるため、範囲を知らずに見積もりだけを比べても、正しい比較にはなりません。
もう一つ注意したいのが、工事を頼む石材業者です。
特にお寺の墓地や一部の民営霊園では、区画の工事を任せられる石材業者があらかじめ指定されていることがあります(指定石材店制度)。
自分で安い業者を見つけても、指定業者以外は作業できない決まりだと使えないため、この点も範囲とあわせて管理者に確認しておくと安心です。
つまり、撤去の範囲を最終的に決める権利は、お墓を使う家族ではなく、区画を管理する墓地の管理者にあります。
そしてその管理者が誰かは、墓地の種類によって変わります。
| 墓地の種類 | 管理者(範囲を決める人) | 確認先 |
|---|---|---|
| お寺の墓地 | お寺の住職 | お寺に直接相談する |
| 公営墓地 | 自治体 | 役場の担当窓口・管理事務所 |
| 民営霊園 | 運営する管理会社 | 霊園の管理事務所 |
見積もりの前に管理者へ撤去範囲を確認する
費用のトラブルを防ぐために大切なのは、石材業者に見積もりを頼む前に、まず墓地の管理者へ「どこまで撤去して返す必要があるか」を確認しておくことです。
管理者によって「基礎は残してよい」という場合もあれば、「更地にして返す」と決まっている場合もあり、その前提が違うと見積もりの金額も大きく変わります。
管理者に確認しておきたい3つのこと
- 撤去の範囲:墓石だけでよいのか、外柵や基礎まで解体して更地にする必要があるのか
- 返し方の決まり:区画をどのような状態で返すことになっているか
- 指定の業者があるか:工事を頼む石材業者に指定や制限があるか
この確認を先にしておけば、見積もりを取ったあとで範囲が変わって費用がふくらむ、という事態を防げます。
特に基礎や地中の構造物の撤去は、重機を使ったり手作業で掘り起こしたりと手間がかかり、墓石だけを外す場合よりも費用が上がりやすい部分です。
だからこそ、複数の業者から見積もりを取るときも、全員に同じ撤去範囲を伝えて比べることが大切です。
範囲がバラバラのまま金額だけを見比べても、どこが本当に安いのかは分かりません。
撤去費用の相場を知っておきたい方は、墓じまいの見積りは30万円安くできる!後悔なく進める相見積のススメもあわせて確認しておくと、管理者から聞いた範囲をもとに複数の業者を比べやすくなります。
権利があっても一人で勝手には進められない
家族の中で祭祀承継者に決定権があり、範囲は管理者が決めるとしても、それだけで墓じまいを一人でどんどん進めてよいわけではありません。
実務上は、必ず踏んでおきたい手順があります。
お寺や霊園への相談と親族の合意が欠かせない
墓じまいを進めるには、まずお墓が置かれているお寺や霊園の管理者に連絡し、承諾を得る必要があります。
永代使用権は管理者から使用を許された権利であるため、使用を終えるという判断も、管理者に伝えて了承を得たうえで進めるのが手続きの前提です。
承諾を得ずに勝手に石材業者を入れて工事を始めてしまうと、後から「聞いていない」と管理者との関係がこじれたり、手続き上のトラブルに発展したりすることがあります。
この最初の連絡のときに、前の章でふれた撤去の範囲もあわせて確認しておくと、話がスムーズです。
お寺の場合は、お寺との関係を終えること(お寺の檀家をやめること)を伴うこともあり、お布施や離檀料は地域やお付き合いの深さによって幅があります。
金額に決まりがあるわけではないので、事前に率直に相談しておくと後で慌てずにすみます。
また、お墓から遺骨を取り出す前には、魂抜き(お墓に宿った魂を抜く供養)をお寺にお願いするのが一般的で、その日程調整も必要になります。
住職への伝え方やお布施の考え方は、墓じまいのお坊さんへの頼み方と費用を解説|お布施相場と当日マナーで確認できます。
あわせて欠かせないのが、親族の合意です。
祭祀承継者に決定権があるとはいえ、親族に一切相談せずに進めると、後から「知らなかった」「同意していない」という声が出て、家族の関係がこじれることがあります。
特に、次のような状況では事前の合意が重要です。
- 複数の家族が、それぞれお墓を守ってきたという意識を持っている
- 墓じまい後の遺骨の行き先(永代供養・散骨など)について家族内で意見が分かれている
- 撤去の範囲や費用の負担について、家族の考えがそろっていない
遺産分けの書類に書いても法律上の効力はない
よくある誤解も整理しておきます。
遺産分割協議書(相続の際に財産の分け方を決める書類)に「お墓はAが引き継ぐ」と記載しても、それでお墓の祭祀承継者を法的に決定したことにはなりません。
お墓は相続財産ではなく祭祀財産として、遺産相続とは別の仕組みで決まるからです。
正式な承継者として認められるには、お寺や霊園への届け出や名義変更の手続きが別途必要になる場合があります。
親族の意見の対立が深刻で、話し合いだけでは解決が難しいと感じている場合は、その墓じまいトラブル、弁護士は必要?3つの判断基準と相談窓口を解説で、専門家に相談すべき状況かどうかの判断基準を確認できます。
遠方や嫁いだ人も墓じまいへの関わり方を整理できる
「嫁いだ自分には、お墓のことを口出しする立場にない」「遠くに住んでいるから、地元の家族に任せるしかない」——そう感じて、ずっと黙ってきた方も多いと思います。
しかし、立場の遠近や嫁いだかどうかは、墓じまいを進める権利そのものとは直接関係しません。
大切なのは、家族の中で誰が名義(祭祀承継者)なのかという一点です。
まず名義人が誰かを確認する
自分がどこまで関われるかを整理する最初のステップは、お墓の名義人(祭祀承継者)が誰になっているかを確認することです。
確認先は、お墓が置かれているお寺または霊園の管理事務所です。
「名義人が誰になっているか教えてもらえますか」と問い合わせれば、多くの場合は確認できます。
遠方に住んでいても、電話やメールで問い合わせることは十分可能です。
確認の結果として、次の3つのパターンが考えられます。
名義を確認したときの3つのパターン
- 名義人が自分以外の家族の場合:進める権利はその人にあるが、名義人でも親族の合意なしには進められない。家族として話し合いに加わり、意見を伝える立場にある
- 名義人が自分の場合:あなたが祭祀承継者で、手続きを進める権利を持つ。遠方や嫁いだ立場でも、名義があればそれが根拠になる
- 名義人が亡くなり承継者が未定の場合:最ももめやすい。まず家族で話し合って承継者を一人に定め、必要なら名義変更をしてから手続きに入る
名義が自分になっていれば、遠方でも手続きを進める権利があります。
遠方からの進め方は、お墓の引越し手続き・費用相場を全て解説|行政手続から業者依頼方法までの全手順で、立ち会えない場合の手続きの全体像まで把握できます。
名義が曖昧なまま進めると後でもめやすい
名義の確認を後回しにしたまま、「なんとなく長男が仕切っているから」という流れで進めてしまうと、後からトラブルになりやすくなります。
たとえば、話し合いに参加していなかった家族が「同意した覚えはない」と主張したり、名義人でない人が手続きを進めようとしてお寺や霊園に受け付けてもらえなかったりします。
撤去の範囲についても同じで、誰かが管理者に確認しないまま業者に発注してしまい、あとで「基礎まで必要だった」と追加費用が出て、負担を誰がするかで気まずくなることもあります。
こうしたトラブルを避けるために有効なのが、名義の確認と撤去範囲の確認を最初の一手として、関係する家族全員に共有するという進め方です。
「名義人はお兄さんで、管理者に聞いたら基礎まで更地にして返す決まりだった」といった事実を全員が知ったうえで話し合えば、誰が何を決めるのかについての認識のずれをあらかじめ防げます。
名義があいまいなままだと手続き自体が止まることもあるため、墓じまいの必要書類3つを全て解説|手続きの全体像が10分でわかるで書類の全体像も把握しておくと安心です。
名義と撤去範囲を確認して墓じまいを進めよう
この記事でお伝えしてきたことを、最後に整理します。
墓じまいには「誰が決めるのか」という権利が二つあります。
家族の中で墓じまいを進める権利は、お墓の名義を引き継いだ祭祀承継者にあります。
そして、墓石をどこまで撤去するかという範囲を決める権利は、区画を管理する墓地の管理者にあります。
この二つを取り違えると、進める人があいまいなまま話がこじれたり、範囲を確認せずに見積もりが大きくふくらんだりします。
「自分には関係ない」と思っていた方も、名義人が誰かを確認するという行動一つで、話し合いに正当に加わる根拠が生まれます。
そして、墓石だけでよいのか基礎まで必要なのかは、思い込みで進めず、墓地の管理者に確かめることが大切です。
この二つを取り違えなければ、進める人でもめることも、範囲の勘違いで費用が想定外にふくらむことも防げます。
まず最初の一歩は、お墓が置かれているお寺または霊園に連絡して、名義人が誰になっているか、そして撤去はどこまで必要かを確認することです。
その二つが分かれば、家族への連絡も、業者への見積もり依頼も、落ち着いて進められます。
参考リンク:


