
無縁墓の墓じまいの依頼方法
手順・費用とトラブルを防ぐ進め方
【2026年7月更新】
管理している墓地に、無縁墓の墓じまい(無縁墓の遺骨を移す手続き)をどう進めればいいのか分からず、手をつけられないまま放置してしまっている——そんな墓地の管理者は、決して少なくないのではないでしょうか。
管理費の未納が続き、連絡を取ろうにも縁故者が見つからない。
撤去したいけれど、後からトラブルになるのが怖い。
費用も誰が負担するのかはっきりしない。
そうした不安が重なって、「いつかやらなければ」という気持ちだけが積み重なっていきます。
後を継ぐ人がいないお墓や、代を継ぐ人が途絶えたお墓は年々増えており、同じ悩みを抱える墓地の管理者は各地にいます。
結論からお伝えすると、無縁墓の墓じまいは「官報での公告・立札の1年間掲示・改葬許可申請」という法律で定められた3つの手順を正しく踏めば、縁故者とのトラブルや法的な不備のリスクを抑えながら完了できます。
ただし、手順を踏んだだけでは十分でないこともあります。
行政が認める改葬許可と、民法上のお墓を引き継ぐ権利(祭祀承継)は別のものとして扱う必要があり、縁故者の調査を尽くさないまま撤去に踏み切ると、許可を取った後であっても損害賠償を求められるリスクが残る場合があるからです。
この記事では、無縁墓の墓じまいを誰に頼むか(石材店・行政書士・墓じまい業者の役割分担)から、法律で定められた手順の全体像・費用の内訳・縁故者トラブルを防ぐ注意点まで、墓地の管理者が知っておきたい情報を順番に整理しています。
読み終えるころには、管理している墓地の現状確認・手順と費用の全体像の把握・専門業者への相談という3つの行動を、迷わず起こせる状態になっているはずです。
この記事を読んで分かること
- 無縁墓の墓じまいの3つの依頼先
- 法定手順3ステップと1基あたりの費用の目安
- 縁故者トラブルと損害賠償を防ぐ記録の残し方
ぜひ最後までお読みください!
目次
無縁墓の墓じまいは3者で分担して進める

無縁墓の墓じまいは、墓地の管理者だけで完結できる作業ではありません。
法律で定められた手順の管理、墓石の撤去、遺骨の取り扱い、書類の作成と、関わる作業の種類が多岐にわたります。
それぞれに専門性が必要なため、「誰に何を任せるか」を最初に整理しておくことが、スムーズに進めるための前提になります。
実際の手続きでは、主に次の3者の専門家・業者が関わります。
| 依頼先 | 主な役割 | 任せる作業 |
| 石材店・墓じまい業者 | 現場の作業 | 墓石の撤去・整地・遺骨の取り出し・移し先の手配 |
| 行政書士 | 調査と書類 | 縁故者の戸籍調査・官報公告・改葬許可申請の書類作成 |
| 墓じまい業者(一括対応) | 窓口の集約 | 撤去から書類・移し先までを一つの窓口でまとめる |
石材店・墓じまい業者は撤去と遺骨の取り扱いを担う
墓石の解体・撤去、基礎コンクリートの撤去、整地、遺骨の取り出しといった現場の作業を担うのが、石材店や墓じまいの専門業者です。
無縁墓の場合、取り出した遺骨をどこへ移すかという移し先の手配も合わせて相談できる業者を選ぶと、段取りが整いやすくなります。
合葬墓や永代供養墓への納骨まで一括で対応している業者も多く、管理者が個別に手配する手間を省けます。
遠方の墓地でも写真での確認を含めて対応できる業者なら、管理者が現地に毎回立ち会えない状況でも進めやすくなります。
行政書士は戸籍調査と書類作成を担う
無縁墓であることを確かめるための縁故者の調査や、官報公告・改葬許可申請の書類作成を担うのが行政書士です。
ここで重要なのは、他人の戸籍を調べられるのは行政書士などの国家資格者に限られるという点です。
墓地の管理者が自分で他人の戸籍を取り寄せることはできません。
縁故者の調査を確実に行い、後から「調査が不十分だった」と問われないためにも、この部分は専門家に任せるのが安全です。
墓じまい業者への一括依頼という選択肢もある
「墓石の撤去だけ」の業者に書類作成まで頼んでも、対応できないことがあります。
撤去から書類作成、遺骨の移し先の手配までを一つの窓口にまとめられる一括対応型の業者に任せれば、管理者は「確認・判断・最終的な申請」に集中できます。
ただし業者によって対応できる範囲はさまざまなので、最初の相談の段階で「戸籍調査や書類作成まで含めて対応できるか」を確かめておくことが大切です。
この3者の役割を頭に入れておくだけで、「誰に何を聞けばいいか分からない」という最初の迷いは、かなり解消されます。
無縁墓の墓じまいの全体像は、墓じまい完全ガイド|費用相場や手続きの流れを全て解説でも整理しています。
無縁墓の墓じまいは3ステップで1年以上かかる

無縁墓の墓じまいを進めるうえで、多くの管理者がつまずきやすいのが「手順の全体像が見えない」という点です。
何となく「行政に申請すればいい」と分かっていても、何をいつ・どの順番で行えばいいかがはっきりしないと、着手のタイミングを誤ったり、期間の見積もりを大きく外したりするおそれがあります。
無縁墓の墓じまいの手順は墓地埋葬法施行規則第3条に定められており、「公告と掲示」「1年間の待機」「改葬許可申請」という3つのステップで構成されています。
全工程を終えるには、最低でも1年以上かかります。
「今年中に片づけたい」と考えて動き始めた管理者が、期間の長さに驚くことは少なくありません。
着手は早いほど有利です。
ステップ1|官報への公告と立札の掲示を同時に始める
最初に行うのは、「この墓は縁故者が分からない無縁墓である」という内容を広く知らせる公告です。
具体的には、官報への掲載と、墓地の現地への立札の設置を同時に行います。
立札には「1年以内に申し出がなければ墓じまいを行う」という内容を明記し、その状態を1年間保ち続けることが法律上の要件です。
官報への掲載は個人でも手続きできますが、掲載文の作成や申請には手間がかかります。
官報販売所で掲載できる日を確かめ、掲載する内容と掲載日を事前にすり合わせておくと、後の申請で日付の食い違いを防げます。
行政書士に依頼すれば掲載内容の確認から申請まで任せられるので、ここで専門家と連携しておくと後の工程がスムーズになります。
立札は市販品でも手作りでも構いませんが、「掲示を始めた日付」が後の申請書類で必要になるため、掲示を始めた日は記録として残しておきます。
立札で気をつけたいこと
- 「1年以内に申し出がなければ墓じまいを行う」旨を明記する
- 倒れたり撤去されたりしないよう、1年間ずっと掲示し続ける
- 設置した日と定期的な現地確認の様子を写真で記録に残す
ステップ2|1年間、縁故者からの申し出を待つ
公告と立札の掲示を始めたあとは、1年間、縁故者から名乗り出がないかを待つ期間に入ります。
この間に縁故者から連絡があった場合は、進め方について話し合いが必要になります。
1年間まったく申し出がなければ、次のステップへ進めます。
注意したいのは、立札を立てたまま放置してしまうことです。
掲示の状態が途中で変わっていたり、立札が倒れたり撤去されたりしていると、法律上の要件を満たしていないと判断されるおそれがあります。
1年を通じて掲示の状態を保ち、定期的に現地を確認することが求められます。
写真を複数のタイミングで残しておくと、申請のときの証明資料として役立ちます。
この待機期間中に、次のステップで必要になる書類の準備を並行して進めておくと、全体の期間を短くできます。
たとえば、無縁墓の写真や位置図の整理、立札を定期的に撮影しておくこと、縁故者へ連絡を試みた記録の保管などは、この1年の間に少しずつ進められます。
ステップ3|改葬許可を自治体の窓口へ申請する
1年間の掲示期間が終わり、縁故者からの申し出がなかった場合は、改葬許可申請のステップに入ります。
申請先は、墓地のある市区町村の窓口です。
申請に必要な添付書類は、主に次の3点です。
- 無縁墓の写真と位置図
- 官報の写しと、掲示していた立札の写真
- 縁故者からの申し出がなかったことを証明する書面
書類の様式や記載方法は自治体によって異なるため、事前に窓口へ確認しておくのが確実です。
窓口での案内が必ずしも正確とは限らない場面もあるので、「窓口でこう言われたから大丈夫」と受け取るだけで済ませず、書類に不備がないか行政書士に確認してもらってから提出するほうが安全です。
改葬許可が下りたあとは、墓石の撤去・遺骨の取り出し・新しい納骨先への納骨という実務の工程に移ります。
この3つのステップを整理すると、「公告と掲示の開始」から「改葬許可の取得」まで、最短でも1年以上かかることが分かります。
申請書類の詳しい中身は、墓じまいの必要書類3つを全て解説|手続きの全体像が10分でわかるで確かめられます。
費用は撤去・供養・公告の3つで見積もる
無縁墓の墓じまいにかかる費用は、大きく「墓石の撤去費」「遺骨を移して供養する費用」「公告・書類の費用」の3つに分けて考えると整理しやすくなります。
費用の全体像をつかまないまま動き始めると、途中で想定外の出費が出たり、予算の確保が間に合わなかったりします。
最初に「何にいくらかかるか」を項目ごとに把握しておくことが、管理者としての判断を誤らないための第一歩です。
なお、無縁墓の墓じまいの費用は、原則として墓地の管理者が負担するケースが多くなります。
縁故者がいない以上、費用を誰かに請求できる見込みは薄いため、予算の確保を含めて早い段階から準備しておく必要があります。
墓石の撤去費は費用の大半を占める
費用のなかで最も大きな割合を占めるのが、墓石の解体・撤去・整地にかかる費用です。
一般的な目安は、1基あたり10万円から30万円程度です。
ただしこの金額は、墓石の大きさ・基礎の深さ・重機が入れる立地かどうかによって大きく変わります。
特に注意したいのが基礎コンクリートの撤去費用です。
基礎が深く埋まっている場合や、隣の墓との兼ね合いで重機が使えない場合は、手作業での解体が必要になり費用が上がります。
山間部や階段の多い墓地では搬出の手間が増えるため、平地の霊園と同じ感覚で見積もると大きく外れることがあります。
複数の無縁墓をまとめて撤去する場合は、まとめて発注することで費用を抑えられることもあります。
台帳で対象の墓の数と状況を先に整理したうえで、複数の業者に見積もりを依頼するとよいでしょう。
遺骨を移して供養する費用は移し先によって幅がある
取り出した遺骨をどこへ移すかによって、費用は大きく変わります。
無縁墓の場合に多く選ばれるのは、合葬墓(合祀墓)への納骨です。
合葬墓は他の遺骨と一緒に納める形式で、費用の目安は1体あたり3万円から10万円程度です。
個別の区画を持たないぶん、その後の管理費が発生しない点も管理者にとっては利点になります。
墓地によっては、敷地内に合葬用の区画を設けて自前で対応することもあります。
その場合は新たな設備の費用がかかることも念頭に置いておきます。
遺骨の移送費は移し先の距離によって変わりますが、近い距離であれば業者の撤去費用に含まれることも多いので、見積もりの段階で「遺骨の移送はどの範囲まで含まれるか」を確かめておきます。
遺骨の移し先の選び方は、墓じまいと永代供養の違いとは?意味・手順・費用と選び方を解説も参考になります。
公告・書類の費用は固定費として先に押さえる
官報への公告料と行政書士への依頼費用は、撤去費や供養の費用と比べると金額は小さいものの、手続きを始める前に確定できる「固定費」として先に把握しておきたい項目です。
官報の掲載料は、掲載する文字数や回数によって異なりますが、数千円から数万円程度が一般的な目安です。
無縁墓の数が多い場合は、まとめて公告することで掲載料を抑えられることもあります。
行政書士への依頼費用は、戸籍調査・書類作成・申請の補助を含めて10万円から20万円程度が目安ですが、依頼する作業の範囲によって変わります。
「書類作成だけ」「戸籍調査込み」「申請まで一括」で金額が変わるため、どこまで任せるかを決めてから見積もりを依頼するとよいでしょう。
| 費用の項目 | 目安 | 金額が変わるポイント |
| 墓石の撤去費 | 1基あたり10万〜30万円 | 墓石の大きさ・基礎の深さ・立地 |
| 遺骨を移して供養する費用 | 合葬墓で1体3万〜10万円 | 移し先の種類・距離 |
| 公告・書類の費用 | 官報数千〜数万円+行政書士10万〜20万円 | 依頼する作業の範囲 |
3つの費用項目をまとめると、無縁墓1基あたりの総額は、規模や条件によって異なりますが、20万円から50万円程度を一つの目安として想定しておくと現実的です。
無縁墓が複数ある場合はその分だけ費用がかさむため、台帳で対象の墓の数を先に把握してから専門業者に相談するのが正しい順番です。
なお、自治体によっては、無縁墓の整理や墓地の再整備に補助金や助成の制度を設けている場合があります。
着手する前に、墓地のある市区町村へ制度の有無を確かめておくと、費用の負担を抑えられることがあります。
手続きの不備が縁故者トラブルを招く
法律で定められた手順を踏み、改葬許可を取得した。
それでもトラブルに発展することがあります。
「手続きは正しく進めたはずなのに、後から縁故者が現れてクレームを受けた」という事態は、手順の踏み方ではなく、手順の「意味の理解」に抜けがある場合に起きやすくなります。
核心にあるのは、行政の手続きと民法上の権利が「別の軸で動いている」という事実です。
見落としやすい落とし穴
- 改葬許可は「行政上の許可」にすぎない
- お墓を引き継ぐ権利(祭祀承継)は民法第897条が定める別の権利
- 許可を取っても縁故者が同意していなければ、民事の争いになりうる
改葬許可は行政上の許可で、民法上の権利とは別物
改葬許可とは、遺骨を今の場所から別の場所へ移すことを行政が認めた証明書です。
墓地埋葬法にもとづくこの許可は、あくまで行政手続き上の要件を満たしたことを示すものにすぎません。
一方、民法上のお墓を引き継ぐ権利(祭祀承継)は別の話です。
お墓や遺骨は「祭祀財産」として位置づけられ、誰がそれを引き継ぐかという権利は民法第897条が定めています。
改葬許可を持っていても、祭祀承継者にあたる縁故者が「同意していない」と主張すれば、民事上の争いに発展する可能性があります。
行政の窓口で許可が下りたことと、縁故者が法的に納得しているかどうかは、まったく別の問題として扱われるということです。
縁故者の調査を尽くさないと損害賠償のリスクが残る
過去には、立札などで法律で定められた手順を踏み、市から改葬許可を得て無縁墓を撤去したにもかかわらず、後から現れた縁故者がお寺に損害賠償を求め、高松高裁がおよそ370万円の賠償を命じた裁判もあります。
この裁判では、手入れの跡などから使用者がいることが強く疑われたのに、調査を尽くさなかった点に過失があると判断されました。
金額の大小にかかわらず、行政の許可を得ていても民事上の責任を問われうるという点は、管理者として押さえておきたいところです。
ポイントは、「許可を取ったから大丈夫」という認識だけでは、民事上のリスクを取り除けないことがあるという点です。
施行規則第3条が定める手順は、あくまで行政上の要件を満たすためのものです。
縁故者の民事上の権利に対応するには、戸籍調査をはじめとする別の対策が欠かせません。
専門家と組んで記録を残すことが最大の予防策になる
縁故者トラブルを防ぐために管理者ができる最も有効な対策は、「調査と手続きのすべてを記録として残すこと」です。
いつ・何を・どのように行ったかを書面と写真で残し、時系列で管理しておきます。
この記録が、後から縁故者が現れたときの「誠実に対応した証拠」になります。
記録として残しておきたい主な項目は、次のとおりです。
- 官報掲載の写し(掲載した日・掲載した内容)
- 立札の写真(設置した日・設置場所・定期的な確認の記録)
- 縁故者へ連絡を試みた記録(送った書面の写しなど)
- 改葬許可申請の書類一式のコピー
- 遺骨の取り出し・移送・納骨の記録
これらを自分だけで管理するのではなく、行政書士や墓じまい業者と連携して作成・保管する体制を整えることが、実務上のリスクを最小にします。
万が一、縁故者との話し合いが難しい状況になった場合は、専門家への相談が早いほど選べる手が広がります。
法的な対応が必要になるかどうかの判断の目安は、その墓じまいトラブル、弁護士は必要?3つの判断基準と相談窓口を解説で整理しています。
まず無縁墓の現状を確認して相談してみよう
無縁墓の墓じまいは、「官報での公告・立札の1年間掲示・改葬許可申請」という法律で定められた手順を踏めば、縁故者トラブルや法的な不備を抑えながら完了できます。
ただし、行政の許可と民法上の権利は別物であること、縁故者の調査を尽くして記録を残すことの2点を押さえておくことが、後々のトラブルを防ぐ鍵になります。
手順・費用・注意点の全体像がつかめたら、あとは動き出すだけです。
最初にやることは、大きな決断ではありません。
まず、管理している墓地の台帳を開いて、管理費の未納や連絡が取れない状態が続いている墓がどれくらいあるかを確認します。
対象になりそうな墓の数と状況が分かったら、手順と費用の全体像に照らして、自分たちで対応する範囲と専門業者に任せる範囲を切り分けます。
そのうえで、撤去から書類まで対応できる専門業者に相談し、見積もりを取ってみてください。
無縁墓は放置している間も増え続けます。
まずは現状を確認するところから、無理のないペースで始めてみてください。
参考リンク:



