墓石の写真

【2026年7月更新】

「ご家族の成年後見人になったけれど、本人に代わって墓じまいを進めるにはどうすればいいのだろう」。

そう調べ始めて、手順が分からないまま立ち止まっている方は少なくありません。

認知症などで判断能力を失ったご本人に代わり、後見人として墓じまいを進めたい

けれど「後見人の立場でどこまで動けるのか」「費用をご本人の財産から出していいのか」「家庭裁判所に事前の許可がいるのか」「親族に反対されたらどうするのか」——何から手をつければトラブルにならないのかが見えず、不安が先に立ってしまう。

そんな状況ではないでしょうか。

実際、これまでのご相談でも「親は存命ですが、施設に入っていて本人が動けないため、代わりに自分が進めなければならない状況です」というお声をいただいてきました。

判断能力を失ったご家族に代わって手続きを背負う心細さは、あなただけのものではありません。

結論からお伝えします。

成年後見人でも、正しい手順を踏めばご本人の墓じまいは進められます

ただし一つ知っておきたいのは、お墓は後見人の財産管理権限だけでは動かせないという点です。

だからこそ「祭祀承継者」という立場で進め、家庭裁判所へ報告し、親族の同意を得る——この手順と注意点を押さえることが、疑われずに進めるための鍵になります。

難しく聞こえるかもしれませんが、順番に整理していけば、一つひとつは決して複雑なものではありません

この記事では、成年後見人がご本人の墓じまいを進める手順を最初から順番に整理し、あわせて起こりやすいトラブルと対策も具体的に解説します。

読み終えるころには、今日から何をすればいいかがはっきり見えているはずです。

この記事を読んで分かること

  • 後見人が墓じまいを進める5つのステップ
  • お墓を動かせるのは祭祀承継者である理由
  • ご本人の財産から費用を出すときの記録
  • 使い込みや親族トラブルを防ぐ対策

ぜひ最後までお読みください!

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成年後見人が本人の墓じまいを進める手順

成年後見人が本人の墓じまいを進める5つの手順を示すイラスト

まず、全体の流れをつかんでおくと迷わず動けます。

成年後見人がご本人の墓じまいを進めるときは、次の順番で手続きを進めるのが基本の形です

ステップすること後見人ならではのポイント
1ご本人が祭祀承継者にあたるか確認するお墓を動かせるのは祭祀承継者。後見人という立場とは別に確認する
2家庭裁判所・後見監督人へ相談する費用をご本人の財産から出す場合は、事前に確認しておくと安心
3お寺へ連絡する魂抜きの日程や、お寺との関係を終える手続きを相談する
4親族へ連絡し同意を得る記録が残る方法で連絡し、反対意見にも備える
5石材業者へ依頼する改葬許可証の取得と合わせて進める

この5つのうち、一般的な墓じまいと違って後見人ならではの注意が必要なのが、ステップ1の「立場の確認」とステップ2の「家庭裁判所への対応」です。

この2つは、後見人がお墓を動かす権限を直接は持たないこと、そしてご本人の財産を預かる立場であることから生まれる、後見人特有の手続きです。

ここさえ押さえておけば、ステップ3から5は、お寺への連絡・親族への相談・業者への依頼という、通常の墓じまいと同じ流れで進められます。

つまり、後見人だからといって特別に難しい手続きが増えるわけではなく、最初に「立場」と「お金の扱い」を整えておけば、あとは一般的な墓じまいと同じだと考えると気持ちが楽になります。

まず墓じまいそのものの全体像を先に把握しておきたい方は、墓じまい完全ガイド|費用相場や手続きの流れを全て解説をあわせてご覧いただくと、後見人としての手順がより具体的にイメージできます。

次の章から、後見人がつまずきやすいステップ1・2を中心に、一つずつ見ていきます。

墓を動かす手続きは「祭祀承継者」として進める

墓を動かせるのは祭祀承継者だと示すイラスト

手順のステップ1で確かめたいのが、「ご本人が祭祀承継者にあたるか」です。

ここが、後見人が墓じまいを進めるうえで最初の分かれ道になります。

なぜ後見人の権限では墓を動かせないのか

成年後見人が管理できるのは、ご本人が持つ「一般の財産」です。

具体的には次のようなものが含まれます。

  • 預貯金・現金
  • 不動産(自宅・土地など)
  • 株式などの有価証券
  • 施設入所費用や医療費の支払い

一方、お墓は民法897条で「祭祀財産」と定められています。

同条は「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する」と定めており、「墳墓」がお墓そのものを指します。

ポイントは「前条の規定にかかわらず」という一文です。

前の条文(民法896条)は相続による財産の承継を定めたもので、「にかかわらず」という言葉は、お墓が通常の相続財産とは別のルールで動くことを意味します。

なぜ、お墓だけが別の枠に置かれるのでしょうか。

一般の財産は「財産的な価値を持ち、換金や売買ができるもの」として扱われます。

これに対してお墓は、先祖を祀るという宗教的・文化的な役割を担うものとして、経済的な価値よりも「誰が主宰するか」という承継の問題として整理されているためです。

後見人の役割はご本人の財産を守り、生活を支えることであり、祭祀財産の承継はその本来の目的とは性質が異なります

この区別が、成年後見でも同じように働きます。

後見人の財産管理権限は、ご本人の「一般の財産」を対象としています。

お墓(祭祀財産)はその枠から外れているため、後見人の管理権限はお墓には及ばず後見人という立場のままお墓を動かすことは、法律上は想定されていません

お墓を動かせるのは「祭祀承継者」——先祖のお墓や仏壇を引き継ぎ、祭祀を主宰する立場の人です。

ここで大切なのは、これは「後見人だから墓じまいができない」という話ではないということです。

後見人と祭祀承継者は別の立場ですが、同じ人が両方を兼ねることができます

多くの場合、これまでお墓を実際に管理してきたご家族が、慣習によって祭祀承継者の立場にあると考えられます。

つまり、ご本人が祭祀承継者にあたることを整理できれば、後見人としての職務とは切り分けて、墓じまいを進められます

ご本人が祭祀承継者にあたるか確認する

祭祀承継者は、遺言による指定があればその人、指定がなければ地域や家の慣習によって定まります。

ご本人が存命のうちは、本来はご本人自身が祭祀承継者であることがほとんどで、認知症で判断能力を失っても、その地位は財産管理とは別の問題として続きます

そのうえで、ご本人が実質的に祭祀承継者の立場にあるかどうかは、次の3つの視点から確かめてみます。

ご本人が祭祀承継者にあたるか確かめる3つの視点

  • 取り決めの有無:ご家族の間で「誰がお墓を継ぐか」を話し合ったことがあるか
  • これまでの実態:管理費を払い、お盆やお彼岸のお墓参りの段取りをしてきたのは誰か
  • 親族の認識:兄弟姉妹や親戚の間で「継ぐ人」についての認識が一致しているか

これまでお墓の管理を実際に担ってきた人は、慣習上の祭祀承継者として認められやすくなります

もし祭祀承継者が誰であるかが不明確だったり、親族間で認識がずれていたりする場合は、家庭裁判所に祭祀承継者の指定を申し立てることもできます

これは後見の手続きとは別に行うものですが、法的な判断が絡むため、弁護士に相談すべきかどうかの判断基準を知りたい方は、その墓じまいトラブル、弁護士は必要?3つの判断基準と相談窓口を解説も参考になります。

後見と墓じまいの両方に詳しい司法書士や弁護士に、ご本人のケースを一度話してみるのが確実です

その際に確認しておきたいのは、主に次の3点です。

一つ目は、慣習や実態から見てご本人が祭祀承継者と認められる根拠があるか、それとも改めて家庭裁判所への申し立てが必要か。

二つ目は、費用をご本人の財産から支出することの適否と、記録の残し方。

三つ目は、家庭裁判所への報告や事前確認をどう進めればよいかです。

この3点を専門家の目で整理してもらえれば、後の手続きで迷ったときも立ち返る先ができます。

ご本人の立場をここで整理しておくことが、この先の手続きをスムーズにする土台になります。

本人の財産から費用を出すときの手順と注意点

手順のステップ2で向き合うのが、費用の問題です。

「墓じまいの費用をどこから出すのか」「ご本人の口座から出したら使い込みと疑われないか」は、後見人が最も不安に感じる点です。

ここは記録の残し方しだいで、疑われるおそれを大きく下げられます

費用は誰が負担するかと支出の考え方

お墓は祭祀財産なので、その整理費用は本来、祭祀承継者が負担するものと考えられています。

ただ現実には、ご本人がこれまで管理費を負担してきた経緯がある場合や、ご本人の財産から出すことが家族全体として合理的と判断される場合もあります。

ご本人の財産から支出するときに大切なのは、支出の目的と金額をはっきりさせ、なぜご本人の財産から出すのが適切と判断したのかを、後から説明できるようにしておくことです。

「ご本人が長年負担してきた管理費の延長として整理費用を出した」「ご本人の身の回りの整理として必要と判断した」といった理由を、できるだけ具体的に残しておくと、後見人としての説明責任を果たしやすくなります。

お墓の取り壊し費用や、お寺へのお礼、改葬許可申請にかかる費用など、支出の一つひとつについて領収書や契約書を保管しておくことも欠かせません。

費用の相場を先に把握しておきたい方は、墓じまいの見積りは30万円安くできる!後悔なく進める相見積のススメが参考になります。

全体像がわかると、家庭裁判所への説明内容も具体的に準備できます。

家庭裁判所への報告で記録を残す

成年後見人には、ご本人の財産について家庭裁判所(または後見監督人)へ定期的に収支を報告する義務があります。

墓じまいの支出が含まれる場合は、次の3つの記録を残しておきます。

費用を出すときに残しておきたい3つの記録

  • 目的と金額:「お墓(祭祀財産)の整理に係る費用」として、金額と用途(お墓の取り壊し費用、お寺へのお礼、改葬許可申請の費用など)を明記し、領収書や契約書を保管する
  • 判断の根拠:なぜご本人の財産から出すのが適切と判断したのか、その理由を文書で残す
  • 家庭裁判所への報告:定期報告の収支に墓じまいの支出を明記し、祭祀承継者として判断した事項である旨を補足する

報告書に「祭祀財産の整理に係る支出であり、祭祀承継者として別に判断した事項について後見財産から費用を充てた」という趣旨の説明を添えると、後見人としての職務と祭祀承継者としての行動が混同されずに区別できます

費用の規模が大きいときは、事後の報告だけでなく、事前に家庭裁判所や後見監督人へ「このような支出を予定しているが問題ないか」と確認しておくと、後から疑念を持たれるおそれをさらに下げられます。

「何をしたか」よりも「どのように記録し、説明できるか」が、疑いを防ぐいちばんの備えになります

お寺・親族・業者への進め方(ステップ3〜5)

立場の確認と費用の整理ができたら、ここから先は一般的な墓じまいと同じ流れです。

ただし、動く順番だけは守っておきたいところです

まず司法書士や弁護士、家庭裁判所への確認を済ませてから、お寺・親族・業者へと進めます

専門家の確認前にお寺や業者へ話してしまうと、話が進んだ後に「法的な整理が必要だった」と気づき、関係者に余計な負担をかけることがあるためです。

お寺へは、まず「意向の確認と相談」として連絡します。

「お墓の管理が難しくなってきており、墓じまいを検討しています。お話を聞いていただけますか」という切り出し方が自然です。

この段階で、お墓に宿るとされる魂を丁寧にお送りする魂抜きの日程、お寺との関係を終える手続きや費用、お墓を取り壊して更地にして返す条件などを確認します。

住職への具体的な話し方は、菩提寺の墓じまいはどうやる?|手順・費用・住職への話し方を全て解説が参考になります。

魂抜きの当日は、お墓の前で住職が読経を行い、参列した家族が手を合わせて臨むのが一般的な流れです。

服装は喪服でなくても構いませんが、黒や紺、グレーなど落ち着いた色味を選ぶと安心です。

後見人として立ち会う場合も、特別な役割が求められるわけではなく、ご本人に代わってご先祖様を見送る気持ちで臨めば十分です。

魂抜きが済むと、石材業者がお墓を解体し、中の遺骨を取り出します。

親族へは、お寺への相談と並行して連絡します。

墓じまいを検討している理由(距離や体力の面で管理が難しくなってきたこと、ご本人が施設に入所していることなど)を率直に伝え、ご本人が祭祀承継者として動くこと、遺骨の新しい納骨先の方向性を共有し、意見があれば聞かせてほしいと伝えます。

納骨先の選択肢を先に把握しておくと、親族への説明に具体性が生まれ、話し合いが進めやすくなります。

最後に、石材業者へお墓の取り壊しと遺骨の取り出しを依頼します。

その前に、遺骨を別の場所へ移すための改葬許可証を用意しておく必要があります

改葬許可証は、移転先の受け入れ証明と、今のお墓がある市区町村役所での改葬許可申請によって取得します。

必要な書類は事前にそろえておくと、業者への依頼から新しい納骨先への納骨まで滞りなく進みます。

取り出した遺骨は、白い布などで包み、丁寧に扱いながら新しい納骨先へ移すのが作法とされています。

遠方で立ち会いが難しい場合でも、写真報告つきで対応できるサービスもあるため、状況に合わせて相談できます。

起こりやすいトラブルと注意点・対策

手順を踏むうえで、後見人ならではのつまずきやすいトラブルがあります。

先に知っておくだけで、その多くは防げます。

代表的な3つのトラブルと対策を整理しておきます。

起こりやすいトラブル主な原因対策
家庭裁判所や親族から「使い込み・越権」を疑われる費用の支出の根拠や記録が残っていない目的・金額・判断の根拠を記録し、家庭裁判所へ報告する。祭祀承継者としての判断と後見人の職務を区別する
親族ともめる・後から反対される事前の連絡や同意なく進めた記録が残る方法で先に連絡し、同意または誠実な対応の事実を残す
手続きの順番を間違える専門家の確認前にお寺や業者に動いたまず司法書士・弁護士、次に家庭裁判所へ確認してから、お寺・親族・業者へ進める

とくに注意したいのが、親族への対応です。

「後見人が勝手にお墓を処分した」と受け取られることが、越権の疑いに直結します

これを防ぐには、墓じまいを進める前に、次の順序で連絡と同意の取得を進めておきます。

  • お墓に縁のある親族(兄弟姉妹、おじ・おばなど)に、文書やメールなど記録が残る方法で連絡する
  • 連絡した内容と相手の反応を記録し、同意が得られたら返信や同意書を保管する
  • 反対意見が出たら、その内容とご本人がどう対応したかも記録に残す

全員の同意が得られなくても、「連絡し、説明し、誠実に対応した」という事実の記録があること自体が、後の説明責任を果たす支えになります

反対意見が出たときは、すぐに論理で押し返すのではなく、まず相手の気持ちを受け止めてから、現状を続けるのが難しい理由を事実として丁寧に伝えると、感情的なわだかまりを残さずに進めやすくなります。

もう一つ知っておきたいのが、後見監督人がいるかどうかで最初の相談先が変わる点です。

後見監督人が選任されている場合は、その方への報告・相談が先になります。

いない場合は、家庭裁判所の後見係へ問い合わせる形です。

「ご本人のお墓を整理する方向で検討しており、費用の一部または全部を後見財産から支出する可能性がある。祭祀承継者としての立場から動くことを前提としているが、後見人としての報告でどう扱えばよいか確認したい」という趣旨で伝えれば十分です。

相談する順番を守り、専門家の確認を最初に済ませておけば、後の手続きで迷ったときも立ち返る先ができ、家庭裁判所への報告もスムーズになります。

親族への説明や交渉の進め方に不安がある方は、墓じまいの交渉のコツ|お寺と親族に角を立てない進め方が、角を立てずに話を進める言い回しの参考になります。

手順を確認して成年後見人の墓じまいを進めよう

成年後見人でも、正しい手順を踏めばご本人の墓じまいは進められます。

つまずきの多くは「立場の確認」と「記録」、そして「順番」で防げます

進めるときの要点を振り返っておきます。

まず、お墓を動かせるのは祭祀承継者なので、ご本人がその立場にあたるかを確認します。

費用をご本人の財産から出す場合は、目的・金額・判断の根拠を記録し、家庭裁判所への報告に明記します。

親族へは記録が残る方法で連絡し、同意または誠実な対応の事実を残します。

そして相談は、司法書士や弁護士、家庭裁判所、お寺、親族、業者の順番で進めると、後から問題が発覚するつまずきを避けられます。

トラブルの多くは、この「立場・記録・順番」の3つを押さえておくだけで防げます。

一度に全部を動かそうとせず、一つずつ確認しながら進めれば、後見人でも疑われることなくご本人の墓じまいを終えられます。

まずは、ご本人が祭祀承継者にあたるかを確かめ、司法書士や弁護士に相談するところから始めてみてください。

参考リンク:

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