
墓じまいは長男がやるべき?
法的義務と兄弟で分担する進め方を解説
【2026年7月更新】
「墓じまいは長男の自分がやらなければ」と、誰かにはっきり言われたわけでもないのに、そう思い込んでいませんか。
墓じまいの話が頭をよぎるたびに、費用のこと、お寺とのやり取り、兄弟への切り出し方と、考えることが山積みになって、気づけば一人で抱え込んでいる。
ネットで調べても「長男が墓を継ぐもの」という情報と「そんな義務はない」という情報が入り混じっていて、結局どうすればいいのか分からないまま時間だけが過ぎていく。
そんな状況に、心当たりはないでしょうか。
実際、これまでのご相談でも「費用は親族と共同で負担することになるので、恐縮ですが相見積もりを取らせてください」といったお声をいただいてきました。
墓じまいを一人だけで背負い込まず、家族や兄弟と分担しながら進めたいという思いは、多くの方に共通しています。
結論からお伝えします。
墓じまいに「長男が担わなければならない」という法的義務はありません。
民法第897条が定めるお墓の引き継ぎ方は「亡くなった方の指定、慣習、家庭裁判所の判断」の順であり、長男を義務者とした条文はどこにも存在しないのです。
ただ、「義務がない」とわかっただけでは、話し合いはなかなか動き出しません。
「では誰がどう進めるのか」「費用はどう分けるのか」「感情的にならずにどう切り出すのか」という具体的な全体像がなければ、家族や兄弟への相談の場が空回りしてしまうことがほとんどです。
この記事では、長男の義務の実際から費用の全体像、兄弟での分担、そして角を立てない切り出し方まで、順を追ってお伝えします。
読み終えるころには、一人で抱え込まずに進める道筋が見えているはずです。
この記事を読んで分かること
- 長男に墓じまいの法的義務がない理由(民法897条)
- 墓じまいの費用の内訳と総額の目安
- 兄弟で分ける「手続き・費用・現地」の3役割
- 角を立てずに家族へ切り出す伝え方
ぜひ最後までお読みください!
目次
墓じまいを長男が担う法的義務はない

「長男だから」という言葉には、法律上の根拠がありません。
墓じまいを特定の続柄に義務づけた条文は、日本の法律のどこにも存在しないのです。
まずは、その根拠となる民法の規定と、「長男が継ぐべき」という慣習がなぜ法律とは別物なのかを整理します。
墓じまいの手続き全体の流れをあわせて知りたい方は、墓じまい完全ガイド|費用相場や手続きの流れを全て解説も話し合いの土台になります。
民法第897条が定めるお墓の引き継ぎ方
お墓を誰が管理・引き継ぐかについては、民法第897条に定めがあります。
その内容を要約すると、お墓を引き継ぐ人(祭祀承継者)は次の順で決まります。
お墓を引き継ぐ人が決まる順番(民法第897条)
- 亡くなった方が生前に指定した人がいれば、その人が引き継ぐ
- 指定がなければ、その地域や家の慣習に従って決める
- 慣習でも決められないときに、家庭裁判所が判断する
ここで大切なのは、「長男が引き継ぐ」というのも一つの選択肢に過ぎないという点です。
亡くなった方が「長女に任せたい」と指定すれば長女が、「子どもたちで相談して決めてほしい」という意思があれば家族の合意で決めることができます。
法律が求めているのは「誰かが引き継ぐこと」であって、「長男でなければならない」とは一切書かれていません。
実際には遺言などで生前に引き継ぐ人を決めているご家庭は多くなく、多くの場合は残された家族が話し合って決めているのが実情です。
もう一つ知っておきたいのは、お墓を引き継ぐ人は、お墓の管理やお墓参り・法要を主宰する立場であって、墓じまいの費用を一人で全額負担する義務と直接結びつくものではないという点です。
引き継いだ立場になったとしても、実際にかかる費用の分担は家族間の話し合いで柔軟に決めることができます。
「引き継ぐ=一人で全部支払う」ではないのです。
「長男が継ぐ」は法律ではなく慣習にすぎない
では、なぜこれほど「長男が担うべき」という空気が根強いのでしょうか。
それは、戦前の家制度の名残として「長男が家を継ぐ」という慣習が社会に定着してきたためです。
かつては家督を長男が受け継ぎ、お墓や仏壇もそれに伴って長男が守るのが当たり前とされていました。
しかしこの慣習は、現在の法律には反映されていません。
1947年の民法改正で家制度は廃止されており、今の民法は特定の続柄に墓守の義務を課してはいないのです。
つまり「長男の家がやるべき」という感覚は、法的根拠のない慣習上の空気であって、それに従う法律上の義務はありません。
兄弟や親族から「長男なんだから」と言われたとしても、それは道義的な期待であり、法律上の義務とは別のものです。
もちろん、これまでお墓を守ってきた家の事情や、親族の気持ちを無視してよいという話ではありません。
ただ、「法律で決まっているから逆らえない」と思い込む必要はない、ということです。
この点を正確に理解しておくことは、家族・兄弟との話し合いを進めるうえでとても重要です。
感情論になりがちな話し合いを「法律上はどうなっているか」という客観的な事実から始めることで、特定の人に負担が集中する状況を防ぎやすくなります。
「長男に法的義務はない」という事実は、家族への相談を切り出す最初の拠り所になります。
次章では、その前提として把握しておきたい費用の全体像を整理します。
墓じまいの費用の全体像と相場を把握する

「法的義務はない」とわかっても、費用の全体像が見えていなければ、家族・兄弟との話し合いは具体的に動き出しません。
「だいたいいくらかかるのか」「何にお金が必要なのか」を把握しておくことが、分担の話し合いを現実的に進める土台になります。
費用の主な内訳と相場の目安
墓じまいにかかる費用は、大きく4つに分けて考えると整理しやすくなります。
それぞれの内容と相場の目安は次のとおりです。
| 費用の種類 | 内容 | 相場の目安 |
| 魂抜き(お墓から魂を抜く儀式) | 墓石を撤去する前に、お坊さんに依頼して行う。お布施として包む | 3万〜10万円 |
| 墓石の撤去・整地 | 墓石を解体し、墓地を更地に戻す工事。石材店に依頼する | 15万〜30万円 |
| お寺へのお布施 | 長年お世話になったお寺との関係を終える際に、感謝として包む | 3万〜20万円 |
| 新しい納骨先 | 取り出した遺骨を移す先の費用。選ぶ場所で大きく変わる | 5万〜100万円 |
魂抜きは、墓石を動かす前にお墓から魂を抜くための儀式で、お坊さんへのお布施として包む形が一般的です。
宗派やお寺によって金額が異なるため、事前に確認しておくと安心です。
墓石の撤去費用は、墓地の広さや立地(山奥・階段の有無など)によって大きく変わり、条件が複雑なほど高くなります。
狭い区画でも総額15万〜30万円程度になることが多く、山の中や重機が入らない場所では、さらに上がることもあります。
お寺へ包むお布施に法律上の支払い義務はありませんが、長年お世話になったお寺との関係を円満に終えるために包むことが多いお金です。
相場は3万〜20万円ほどですが、お寺によって考え方に幅があります。
金額や渡し方の考え方は墓じまいでお寺に納めるお布施の相場と考え方で詳しくまとめています。
新しい納骨先は選ぶ場所で費用が大きく変わり、永代供養墓や合葬墓は5万〜30万円程度と比較的抑えられ、納骨堂や樹木葬は施設によって10万〜100万円程度と幅が大きくなります。
海に遺骨をまく海洋散骨を選ぶ方もいます。
一人で全額負担が非現実的な理由と分担の必要性
上記の費用をまとめると、墓じまい全体にかかる総額の目安は次のようになります。
- 標準的なケース:30万〜50万円程度
- 納骨先の選び方や墓地の条件によっては:100万円を超えることも珍しくない
この規模の費用を一人が全額負担するのが非現実的な理由は、金額の大きさだけではありません。
墓じまいは先祖のお墓に関わる問題であり、そもそも兄弟や家族全員が関係する話です。
費用を一人が肩代わりすることで、後から「なぜ相談してくれなかったのか」という不満が出たり、逆に「負担してもらったから意見が言いにくい」という気兼ねが生まれたりと、感情的なしこりが残ってしまうことも少なくありません。
お金の問題は、進め方を一つ間違えると家族関係にひびを入れかねないテーマなのです。
だからこそ、費用の全体像を家族・兄弟で共有し、「誰がいくら出すか」「誰がどの手続きを担うか」を事前に整理しておくことが、最終的にみんなが納得して進められる墓じまいへの近道になります。
また、複数の石材店から見積もりを取ると、金額の妥当性を確かめられるうえに、家族へ示す資料としても役立ちます。
自治体によっては費用を抑えられる補助金がある場合もあるため、墓じまいの補助金は本当にある?確認方法と費用を抑える方法を解説もあわせて確認しておくと、話し合いの選択肢が広がります。
兄弟・家族で公平に役割と費用を分担する考え方
費用の全体像が見えてきたら、次に必要なのは「誰が何を担うか」を具体的に整理することです。
墓じまいを一人で抱え込まないために、役割を目に見える形にして家族・兄弟で分担する仕組みをつくることが大切です。
「手続き」「費用」「現地」の3役割で分ける
墓じまいに必要な作業を大きく3つの役割に分けると、家族・兄弟での分担の話し合いがぐっと進めやすくなります。
| 役割 | 主な内容 | 担いやすい人 |
| 手続き担当 | 役所への改葬許可申請、お寺やお墓の管理者への連絡、石材店の手配、新しい納骨先との調整 | 平日に動ける人、電話や書類が得意な人 |
| 費用負担 | 全体の費用をどう分けるかを決め、実際に負担する | 現地に行けない分を金銭で協力する人 |
| 現地作業 | 魂抜きへの参列、墓石撤去工事の立会い、遺骨の取り出しへの立ち合い | 実家の近くに住む人、日程を調整しやすい人 |
手続き担当は、書類や連絡調整をまとめて引き受ける役割です。
平日に時間が取りやすい人や、電話・パソコンでのやり取りが苦にならない人が向いています。
費用負担は、全体の金額をどう分けるかを決めて実際にお金を出す役割で、現地に行けない兄弟がここで協力する形もよくあります。
現地作業は、実際にお墓のある場所へ出向く必要がある役割です。
役割ごとに担う人を決めるときは、続柄ではなく「動きやすさ」で振り分けるのがコツです。
遠方に住んでいて現地に行けない兄弟が費用を多めに負担する、手続きを多く担った人は費用の負担を軽くするなど、役割と費用のバランスを取ることで、「自分だけ損をしている」という不満が生まれにくくなります。
この3役割の分担を家族・兄弟で共有するだけでも、「自分は何もしていない」「自分だけが動いている」という感覚的な不公平感は大きく解消されます。
口頭だけで決めるのではなく、簡単なメモや表にして残しておくと、後からの認識のズレも防げます。
代理でできる手続きと長男が出向かなくてよい場面
「長男が全部現地でやらなければならない」という思い込みも、実は根拠のないものです。
墓じまいの手続きの多くは、遠方からでも進められます。
- 改葬許可申請:家族の代理人が窓口に行ける。自治体によっては郵送対応も可能
- 戸籍謄本・除籍謄本の取得:郵送で請求でき、現地に行く必要がない
- 石材店やお寺との連絡:電話・メール・LINEで対応できる
- 新しい納骨先の契約:多くの施設で郵送やオンラインの手続きが可能
墓石撤去の工事も、必ずしも誰かが現地で立ち会う必要はありません。
信頼できる石材店や専門の業者に依頼し、作業が終わったあとに写真で報告を受ける形で進めることもできます。
実際に、遠方に住んでいる方が写真の確認だけで墓じまいを進めているケースもめずらしくありません。
改葬許可に必要な書類の取り方は墓じまいの必要書類3つを全て解説|手続きの全体像が10分でわかるで確認できます。
遠方の本籍地からでも郵送で取り寄せられるため、平日に休みを取れない方でも進めやすいはずです。
なお、魂抜きだけは家族の誰かが立ち会えると望ましいものですが、全員が集まる必要はありません。
代表者が一人参列し、他の兄弟は後日のお墓参りで気持ちを表す形でも問題ありません。
このように、現地に出向く場面すら分担や工夫でカバーできるため、「長男が全部やる」必要はどこにもないのです。
役割と費用の分担が整理できたら、最後に残るのは「どう家族に切り出すか」です。
感情論にならない家族・兄弟への相談の切り出し方
役割と費用の分担の考え方が整理できても、実際に家族・兄弟へ切り出す場面でつまずく方は少なくありません。
「長男の家がやるべき」という空気の中で異を唱える気まずさ、費用の話をする遠慮、誰かを傷つけてしまうかもしれないという不安。
そうした感情的なハードルが、話し合いを先送りにさせてしまいます。
「法的義務はない」の共有を出発点にする
家族・兄弟への相談で感情論が生まれやすい最大の原因は、「誰かへの批判」や「負担の押しつけ合い」から会話が始まってしまうことです。
「私たちばかりやっている」「あなたは何もしていない」という言い方では、相手は身構えてしまい、話し合いは前に進みません。
感情論を避けるのに最も有効な出発点は、「法的義務はない」という客観的な事実を全員で共有することです。
誰かへの批判ではなく、中立的な情報から話を始めることで、特定の人が責められているという感覚が生まれにくくなります。
角を立てない切り出し方の3つのポイント
- 「私が困っている」ではなく「調べたら事実がわかった」という形で伝える
- 「あなたにやってほしい」ではなく「みんなで話し合いたい」と招く形にする
- 「知ってた?」と問いかけを添えて、気づきや共感の入り口をつくる
たとえば「墓じまいのことを調べていたら、長男が担わなければならないという法律はないとわかったんだけど、知ってた?一度みんなで、どう進めるか話し合えたらと思って」という切り出し方なら、自分の感情や不満から入らずに、客観的な情報の共有として話を始められます。
ひとつ目のポイントは、自分の困りごとからではなく「調べたら事実がわかった」という形にすること。
ふたつ目は、要求ではなく「みんなで話し合いたい」という招待の形にすること。
みっつ目は、「知ってた?」と問いかけを添えて、相手が知らなければ気づきを、知っていれば共感を引き出すことです。
お寺や親族と角を立てずに交渉を進めるやり取りの実例は、ネットだけで進める不安を、丁寧なやり取りと書類で一つずつ解消した郡上八幡の墓じまいのご相談の記録にまとまっています。
続柄ではなく状況と役割で決める提案の伝え方
「誰が担うか」を続柄で決めようとすると、必ず感情論になります。
「長男だから」「嫁だから」「遠くに住んでいるくせに」という言葉が飛び交う話し合いは、決裂するか、誰かが一方的に我慢して終わるかのどちらかです。
感情論を避けるには、「続柄」ではなく「状況と役割」を基準に提案することが大切です。
話し合いの場では、まず「誰がやるか」を決めようとするのではなく、「それぞれが今どういう状況か」を共有する時間を最初に設けます。
「Aは実家から一番近いから現地の確認は動きやすいよね」「Bは平日に時間が取りやすいから役所の手続きを担ってもらえると助かる」「Cは遠方だから現地には来にくいけれど、費用の面で協力してもらえると全体が動きやすい」という形で、それぞれの現実の状況に合わせて役割を振り分けていきます。
責任の押しつけではなく、それぞれの強みを活かした役割分担という枠組みで提示することで、話し合いが建設的な方向に進みやすくなります。
費用の話は最も感情的になりやすいテーマです。
いきなり「いくら出して」と切り出すのではなく、まず費用の全体像を全員で把握するところから始めるのがおすすめです。
「墓じまい全体でだいたいこのくらいかかることがわかった。どう分けるかは一緒に考えたいんだけど、まずこの金額感を見てほしい」という形で、全員が同じ情報を持った状態をつくることが先です。
それでも話し合いがうまく進まないときや、特定の親族から強い抵抗があるときは、お寺の住職に間に入ってもらう、専門の相談窓口に連絡するといった第三者の力を借りることも選択肢の一つです。
法的なトラブルに発展しそうなときの判断のしかたは、その墓じまいトラブル、弁護士は必要?3つの判断ポイントと相談窓口を解説が参考になります。
家族と分担を話し合って墓じまいを進めよう
墓じまいは、長男が一人で担わなければならないものではありません。
民法第897条を見ても、お墓を引き継ぐ人は「亡くなった方の指定、慣習、家庭裁判所の判断」の順で決まり、長男を義務者とした条文はどこにもありませんでした。
大切なのは、この「法的義務はない」という事実を家族・兄弟で共有し、費用の全体像を把握したうえで、「手続き担当」「費用負担」「現地作業」の3つの役割を、続柄ではなく一人ひとりの状況に合わせて分け合うことです。
まず取り組みたい一歩は、費用の目安と役割の一覧を手元に整理し、「長男が全部やる法律はないみたいだよ」と家族に切り出して、一度みんなで話し合う場をつくることです。
客観的な事実から始めれば、誰かを責めることなく、全員が当事者として参加できます。
手続きの多くは代理や郵送で進められ、現地に出向く場面も分担できます。
焦らず、家族それぞれの状況を確かめながら、納得のいく形で進めていけます。
あなたの墓じまいが、家族みんなが穏やかに向き合える形で進みますように。
参考リンク:


