相続税の申告書と電卓・印鑑・現金など、相続税の申告準備を表す写真

【2026年7月更新】

「小規模宅地の特例って、うちには関係あるのかな」と気になっている方は、多いのではないでしょうか。

親の家をいつか相続することになりそうで、なんとなく調べ始めたけれど、相続税の話は難しい言葉が多くて、自分向けの話なのかどうかさえよく分からない。

そんな気持ちで、この記事にたどり着いた方もいるかもしれません。

結論からお伝えします。

親が住んでいた家の土地は、条件が合えば相続税の計算上の評価額を最大80%、つまり8割も下げられる制度があります。

知っているかどうかで、相続税の負担が大きく変わる制度です。

ただし、この制度は「どの土地か」「誰が相続するか」「申告しているか」の3つの条件がそろって、初めて使えるものです。

どれか一つでも外れると適用されないため、「うちは使えそうか」の確認が何より先決になります。

相続税を調べていると、見慣れない言葉が次々と出てきて、読む気が失せてしまうことがあります。

この記事は、そうした専門用語がよく分からないという方に向けても、やさしく解説しています。

最初の章で、この記事を読むのに必要な言葉をまとめて押さえてから、特例の話へ進む構成になっているので、税務が初めての方でも順を追って読み進められます。

実家の土地に高い相続税がかかって、家を手放す事態だけは避けたい。

そう感じているなら、この記事はその不安に直接答えるものです。

特例が使える土地の条件、誰が相続すれば使えるか、申告が必要かどうか、そして自分の家が当てはまりそうかを確かめるための手順まで、順番に解説していきます。

読み終えるころには、次に何をすればいいかが自然と見えてくるはずです。

この記事を読んで分かること

  • 宅地・評価額・特例など基本の言葉
  • 自宅の土地が最大8割下がる仕組み
  • 対象になる3種類の土地と減額率
  • 配偶者・同居・家なき子の適用条件
  • 税額ゼロでも申告が必要な理由

ぜひ最後までお読みください!

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この記事で出てくる言葉を先に確認しておこう

小規模宅地の特例を理解するために押さえる宅地・相続税評価額・特例・申告の4つの言葉と意味をまとめた図解

相続税の記事を読んでいると、「宅地」「評価額」「特例」「申告」といった言葉が、当たり前のように次々と出てきます。

ひとつ分からない言葉が出るたびに別のページを調べ、気づけば本来の疑問から遠ざかってしまう——そんな経験をした方もいるかもしれません。

この章では、記事を読み進めるのに必要な言葉を4つだけ、先にまとめておきます。

ここを押さえてから次の章へ進むと、特例の話がずっと理解しやすくなります。

言葉意味
宅地建物が建っている土地のこと
相続税評価額相続税を計算するときに使う土地の値段
特例条件を満たすと使える例外のルール
申告税務署に自分で届け出る手続き

宅地とは建物が建っている土地のこと

宅地とは、家や建物が建てられている土地のことです。

親が自宅として住んでいた家の敷地も、この「宅地」にあたります。

田んぼや畑、山林などは宅地には含まれません。

相続税評価額とは相続税を計算するときの土地の値段

土地には、実際に売買されるときの価格(時価)とは別に、相続税を計算するために使う専用の値段があります。

それが「相続税評価額」です。

路線価(ろせんか)と呼ばれる基準をもとに計算されるもので、一般に時価より低めに設定されています。

この評価額をもとに相続税の金額が決まるため、評価額が下がるほど、税負担も軽くなる仕組みです

特例とは条件を満たすと使える例外のルール

税金の世界では、一定の条件を満たした人に対して「通常より有利な計算ができる」特別なルールが設けられていることがあります。

それが「特例」です。

小規模宅地等の特例も、その一つです。

「条件が合えば、通常より大幅に低い評価額で計算してよい」という例外のルールで、知っているかどうかで税負担が大きく変わります。

申告とは税務署に自分で届け出る手続き

「申告」とは、税額を自分(または税理士)が計算し、税務署に報告する手続きです。

特例を使うためには、この申告が必ず必要になります。

税額がゼロになる場合でも、申告しなければ特例は適用されません。

この点は、のちほど詳しく解説します。

なお、この記事で「亡くなった方」のことを被相続人(ひそうぞくにん)、「亡くなった方が残した財産(遺産)を受け取る人」のことを相続人(そうぞくにん)と呼びます。

親の家を相続する話であれば、親が被相続人、その子や配偶者が相続人にあたります。

4つの言葉と2つの呼び方を確認したところで、次の章からいよいよ小規模宅地等の特例の中身に入っていきます。

「なぜこんなに評価額が下がるのか」「どんな土地が対象なのか」を、順番に見ていきます。

親の家の土地は評価額を最大8割下げられる

小規模宅地等の特例で自宅の土地の相続税評価額が5000万円から1000万円へ8割下がることを示した図解

相続税は、受け取った遺産の「評価額」をもとに計算されます。

つまり評価額が下がれば、それだけ税負担も軽くなります。

小規模宅地等の特例は、この評価額を大きく下げられる制度です。

条件が合えば、親が住んでいた自宅の土地の評価額を、最大80%(8割)減額して計算することができます(国税庁タックスアンサーNo.4124)。

8割減とはどれくらいの差があるのか

たとえば、相続税評価額が5,000万円の土地があったとします。

この特例を使わない場合、5,000万円がそのまま相続税の計算に使われます。

一方、特例を使える場合は、5,000万円の8割にあたる4,000万円が差し引かれ、残り1,000万円をもとに計算されます

5,000万円の土地が特例で1,000万円になる

  • 特例を使わない場合:評価額5,000万円がそのまま課税の対象
  • 特例を使える場合:8割の4,000万円を差し引き、残り1,000万円だけが課税の対象

評価額が5,000万円から1,000万円になる——たったこれだけの違いで、相続税の負担は大幅に変わります。

この差が、「知っているかどうかで税負担が大きく変わる」と言われる理由です。

なぜこのような特例があるのか

そもそも、なぜこれほど大きく評価額を下げられる制度があるのでしょうか。

親と同居していた家族や、親の自宅の土地を相続した家族にとって、その土地は「売って現金にできる資産」というより「今も生活の基盤として使っている土地」です。

それにもかかわらず、相続税を払うために自宅の土地を売らなければならない事態が起きては、生活が根底から崩れてしまいます。

この特例は、そうした事態を防ぐために設けられています。

残された家族が、相続税の負担によって住み慣れた家を手放さずに済むよう、国が用意した仕組みです

ただし使えるかどうかには条件がある

ここまで読むと「ぜひ使いたい」と思う方がほとんどでしょう。

ただし、この特例には明確な条件があります。

対象になる土地の種類と面積に上限があること、誰が相続してその後どこに住むかによって使えるかどうかが変わること、そして税額がゼロになる場合でも申告が必要なこと——この3点がそろって初めて適用されます。

次の章から、それぞれの条件を一つずつ確認していきます。

まずは「どんな土地が対象になるか」から見ていきます。

特例が使える土地には種類と面積の上限がある

小規模宅地等の特例は、どんな土地にでも使えるわけではありません。

対象になる土地の「種類」と「面積の上限」が決まっており、この2つの枠の中に収まる部分にだけ、減額が適用されます

対象になる土地は、大きく3つの種類に分かれます。

それぞれ、減額される割合と面積の上限が異なります(国税庁タックスアンサーNo.4124)。

土地の使い方減額割合面積の上限
親が住んでいた自宅の土地80%330平米
親が事業に使っていた土地80%400平米
貸付に使っていた土地50%200平米

親が住んでいた自宅の土地(特定居住用宅地等)

3種類のなかで、最も多くの家庭に関係するのがこのケースです

亡くなった方(被相続人)が自宅として住んでいた土地を、一定の条件を満たす相続人が引き継ぐ場合に使えます。

減額割合は80%、面積の上限は330平米(約100坪)です。

330平米は、一般的な一戸建ての敷地としては比較的広めの基準です。

多くの家庭では、この上限の範囲内に収まることが多いでしょう。

ただし、土地が330平米を超える場合は、超えた部分には減額が適用されません

親が事業に使っていた土地(特定事業用宅地等)

亡くなった方が個人で事業を営んでいた場合、その事業に使っていた土地が対象になることがあります。

減額割合は80%、面積の上限は400平米です。

自営業や個人経営の店舗・工場などの敷地が、このケースに当てはまります。

ただし、相続した人がその事業を引き継ぐことが条件の一つになります。

他人に貸していた土地(貸付事業用宅地等)

亡くなった方が賃貸アパートや駐車場など、貸付事業に使っていた土地が対象になる場合があります。

減額割合は50%、面積の上限は200平米です。

自宅の土地と比べると、減額割合も面積の上限も低く設定されています。

親の家の土地を相続するケースで最も関係するのは、やはり一つめの「親が住んでいた自宅の土地(330平米・8割減)」です。

ただし、減額割合と面積の上限を確認しただけでは、特例が使えるかどうかはまだ分かりません。

もう一つ、大きな条件があります。

それが「誰が相続するか」です。

次の章で確認します。

誰が相続するかで特例が使えるかどうかが変わる

土地の種類と面積が条件を満たしていても、それだけで特例が使えるわけではありません。

「誰が相続するか」によって、使える・使えないが変わってきます

この章では、親が住んでいた自宅の土地を相続するケースを中心に見ていきます。

配偶者が相続する場合は追加の条件なしで使える

亡くなった方の配偶者(残されたご主人や奥様)が相続するケースでは、特に追加の条件なく特例を使うことができます。

同居していたかどうか、相続後もその家に住み続けるかどうかに関わらず、配偶者であれば適用されます

3つのケースのなかで、最も条件が緩やかです。

同居していた子が相続して住み続ける場合も使いやすい

亡くなった方と同じ家に住んでいた子(または親族)が土地を相続し、相続税の申告期限まで引き続きその家に住み続ける場合も、特例を使うことができます。

「同居」とは、亡くなる直前まで実際に同じ家で生活していたことを指します。

住民票の住所だけを移していた場合など、実態が伴わないケースは認められないことがあるため、注意が必要です。

また、申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月)までその家を売却せず、住み続けていることも条件になります。

別居の子でも持ち家がなければ使える(家なき子)

親と別居していた子が相続するケースは、条件が複数重なるため、使えるかどうかの判断がやや複雑になります。

一定の条件をすべて満たせば特例を使えることがあり、この仕組みは「家なき子特例」と呼ばれています。

主な条件は次のとおりです。

  • 相続開始の3年以内に、自分または配偶者が所有する家に住んでいないこと(持ち家がないこと)
  • 相続開始のときに、日本国内に自分名義の家を持っていないこと
  • 相続した土地を、申告期限まで売却していないこと

つまり、「賃貸に住んでいて持ち家がない子が、親の家の土地を相続して売らずに保有し続ける」ケースが、典型的な適用例になります。

ただし、過去に持ち家を売却して意図的に条件を作ろうとするケースを防ぐため、要件は細かく定められています。

「持ち家がないから使えるはず」と自己判断するのではなく、実際の適用可否は専門家に確認するのが確実です。

似たケースでも使える・使えないが分かれやすい

配偶者・同居の子・別居の子(家なき子)という3つのケースを見てきましたが、実際の相続では家族構成や土地の状況が複雑に絡み合います。

たとえば、「相続開始の直前に同居を始めた」「子が転勤中で住民票だけ実家にある」「兄弟で土地を共有する」といったケースでは、一見すると条件を満たしているように見えても、実際には適用されないことがあります

誰が相続するかを決める前に、家族の状況を整理しておくことが大切です。

次の章では、条件がそろったとしても、もう一つ忘れてはいけない手続きについて確認します。

税額がゼロでも申告しないと特例は使えない

特例の対象になる土地があり、使える相続人が決まった。

それでも、もう一つ絶対に外せない条件があります。

それが「申告」です。

特例を使うためには、税務署への申告が必ず必要です。

これは、特例を適用した結果として相続税の税額がゼロになる場合でも変わりません。

税金がかからないなら申告不要という思い込みは危険

相続税には基礎控除(遺産の総額のうち一定額までは税金がかからない非課税の枠)があり、遺産の総額がその範囲に収まれば、そもそも相続税はかかりません。

そのため「うちは税金がかからないから申告は不要」と考える方も多いのですが、小規模宅地等の特例については話が別です

特例を使うことで税額がゼロになる場合、「特例を使ったから税額がゼロ」なのか「そもそも基礎控除の範囲内でゼロ」なのかで、申告の要否が変わります。

特例を使って初めて税額がゼロになるケースでは、申告しなければ特例は適用されません

この特例で最も多い失敗

「申告しなくてもゼロだから大丈夫」と思い込んで手続きをしなかった結果、特例が適用されず、特例がない状態で計算された税額が本来の納税額になってしまう——これが、この特例で最も多い失敗のパターンです。申告しなかったことで、思わぬ追徴課税につながる可能性もあります。

申告には期限と添付書類がある

申告は、相続開始を知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。

この期限を過ぎると、原則として特例を使うことができなくなります

また、申告書を提出するだけでは足りません。

特例の適用を受けるためには、申告書に加えて「小規模宅地等についての課税価格の計算明細書」などの書類を添付することが求められます

添付書類が不足していると、特例が認められないことがあります。

10ヶ月は思ったより短い

相続が発生すると、葬儀の手配、銀行口座の手続き、遺産の把握など、やるべきことが一度に押し寄せます。

そうした慌ただしさのなかで、10ヶ月はあっという間に過ぎていきます

特に、土地の評価や申告書の作成には専門的な知識が必要なため、早めに相続税専門の税理士へ相談することが、期限を守るうえでも重要になります。

自分の家に特例が使えるかは税理士に委ねる

ここまで読んで、「なんとなく条件は分かった。でも、うちの場合はどうなるんだろう」と感じている方も多いのではないでしょうか。

その感覚は、とても自然なことです。

制度の大枠を理解することと、自分の家族のケースに当てはまるかどうかを正確に判断することは、まったく別の話だからです。

面積・土地の使い方・遺産の分け方で結論が変わる

小規模宅地等の特例は、一見すると単純そうに見えて、実際の判断には多くの要素が絡み合います。

たとえば、土地の面積が330平米を超えていれば超えた部分には減額が適用されません。

土地の一部を駐車場として貸していれば、自宅の部分と貸付部分で扱いが変わります。

兄弟で土地と建物を分けて相続する場合は、誰が何を取得するかの組み合わせによって、特例が使える範囲が変わることもあります。

遺産全体の分け方(誰が何を相続するか)が固まっていないと、特例の適用可否そのものが確定しません

「条件に当てはまりそう」という感触だけで進めると、申告後に適用が認められないリスクもあります。

土地の評価そのものが専門的な作業

特例の適用可否の判断以上に、専門性が必要なのが「土地の評価額の計算」です。

相続税における土地の評価は、路線価(ろせんか)と呼ばれる国が定めた基準値をもとに計算しますが、土地の形状・接道の状況・隣地との関係など、現地の細かい条件によって評価額が変わります

この計算を正確に行うことは、税務の専門知識がなければ困難です。

評価額を誤って高く計算してしまうと、本来より多い税額を払うことになります。

逆に低く計算して申告すると、後から税務署に指摘される可能性があります。

土地の評価は、相続税専門の税理士に委ねるのが確実です。

自分でできることは3点をメモにまとめるだけでいい

「では、自分には何もできないのか」というと、そうではありません。

専門家への相談をスムーズに進めるために、今の段階で自分でできることがあります。

それは、次の3点をメモに書き出しておくことです。

  • 土地のおおよその面積(登記簿謄本や固定資産税の通知書に記載されていることが多い)
  • 誰が土地を相続する予定か(配偶者・同居の子・別居の子、など)
  • 同居の有無(亡くなった方と一緒に住んでいたかどうか)

この3点が手元にあるだけで、税理士との初回相談が格段に進みやすくなります。

正確な評価額の計算や、特例の適用可否の最終判断は税理士が行いますが、その前提となる情報を整理しておくことは、自分にもできる大切な準備です

3点をメモに書き出して税理士に相談しよう

ここまで、小規模宅地等の特例の3つの条件を確認してきました。

対象になる土地の種類と面積には上限があり(自宅なら330平米まで8割減額)、誰が相続してどこに住むかで使える・使えないが変わり、税額がゼロでも申告しなければ適用されない、という3点です。

自分の家族のケースに当てはまるかの最終判断は、専門家でなければ正確にはできません。

まず取りかかれる準備は、土地のおおよその面積、誰が相続する予定か、亡くなった方と同居していたかどうかの3点をメモに書き出すことだけです。

面積は固定資産税の通知書や登記簿謄本で確認でき、この3点が手元にあれば税理士との初回相談はスムーズに始められます。

土地の評価額の計算や、特例が使えるかどうかの正確な判断は、税理士の専門領域です(税理士法第52条)。

相続発生から申告期限の10ヶ月はあっという間で、早めに動き出すほど選択肢が広がります

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まずはメモ用紙に3点を書き出すところから始めてみてください。

参考リンク:

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