相続税の申告書と電卓・印鑑・現金など、相続の書類準備を表す写真

【2026年10月更新】

亡くなった家族の銀行口座は名義変更できるのだろうか。

そう思って調べ始めた方に、まずお伝えしたいことがあります。

亡くなった方の銀行口座は、車や携帯電話のように名前を書き換える手続きにはなりません。

相続の場面では、口座をいったん解約して、受け取る方の口座へお金を移す「払い戻し」という手続きになります。

全国銀行協会の案内でも、この手続きは一貫して「払戻し等」と説明されています。

最初の一歩は、亡くなった方が口座を持っていた銀行に電話をして「相続の手続きをしたい」と伝えることです。

ただ、電話一本ですべてが終わるわけではありません。

そのあとに用意する書類が、ご家庭の状況によって変わってきます。

ところが相続の手続きを調べていると、聞き慣れない言葉が次々に出てきて、何のことかよく分からないまま読み進めることになりがちです。

この記事は、そうした言葉がよく分からないという方に向けても、やさしく解説しています。

最初の章で必要な言葉をまとめて押さえてから、手続きの話へ進みます。

この記事を読むと、亡くなった方の口座で今どんなことが起きているのか、手続きが全部で何段階に分かれているのか、ご自分の家がどの状況に当たり、その場合にどの書類をそろえればよいのかが分かります。

葬儀の費用を先に支払わなければならないときの方法と、口座の残高が分かったあとに相続税がかかるかどうかを見る目安もあわせてお伝えします。

葬儀の費用の支払いが迫っている方も、まずはこの記事を読んでから銀行に連絡してみてください。

何を伝えればよいかが分かった状態で電話ができると、窓口でのやり取りがぐんと楽になります。

この記事を読んで分かること

  • 相続で名義変更ができない理由
  • 払い戻しの手続きは4段階
  • 遺言書の有無で変わる必要書類
  • 葬儀費用に使える払戻し制度

ぜひ最後までお読みください!

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まず押さえたい銀行口座の相続で出てくる5つの言葉

遺産・相続人・法定相続人・遺産分割協議書・払戻しという銀行口座の相続で出てくる5つの言葉と意味をまとめた図解

相続の手続きを調べていると、「遺産」「相続人」「遺産分割協議書」といった言葉が次々に出てきます。

意味を知らないまま読み進めると、途中で何のことか分からなくなってしまいます。

そこでまず、この記事で繰り返し出てくる5つの言葉をまとめて押さえます。

言葉 意味のポイント
遺産 亡くなった方が残した預貯金・不動産・生命保険金などの財産
相続人 遺産を受け継ぐ人。亡くなった方は「被相続人」と呼ぶ
法定相続人 法律で受け継ぐ人と決められている人。配偶者は必ず該当する
遺産分割協議書 誰が何を受け継ぐかを相続人全員で決め、書き残した書類
払い戻し 口座を解約してお金を受け取ること。銀行や役所の正式な書類では「払戻し」と書かれる

遺産とは、亡くなった方が持っていた財産のこと

遺産(いさん)とは、亡くなった方が持っていた財産のことです。

銀行の預貯金だけでなく、土地や建物などの不動産、生命保険金なども含まれます。

この記事では主に預貯金を扱います。

相続人とは、その遺産を受け継ぐ人のこと

相続人(そうぞくにん)とは、遺産を受け継ぐ人のことです。

亡くなった方のことは「被相続人(ひそうぞくにん)」と呼びます。

ご家族のどなたかが亡くなった場合、その方が被相続人、遺産を受け継ぐご家族やご親族が相続人にあたります。

「相続人」と「被相続人」は一字違いで混同しやすいため、この記事では被相続人のことを「亡くなった方」と書いていきます。

法定相続人とは、法律で受け継ぐ人と決められている人

法定相続人(ほうていそうぞくにん)とは、法律によって「この人が受け継ぐ人になる」と決められている人のことです。

配偶者(夫・妻)は必ず法定相続人になります。

子どもがいれば子どもも法定相続人になり、いなければ親や兄弟姉妹が順番に法定相続人になる仕組みです。

誰が当てはまるかは相続税の計算や書類の準備に関わるため、あとの章でも登場します。

遺産分割協議書とは、話し合いの結果を書き残した書類

遺産分割協議書(いさんぶんかつきょうぎしょ)とは、誰がどの遺産を受け継ぐかを相続人全員で話し合って決め、その内容を書き残した書類のことです。

「協議(きょうぎ)」とは話し合いのことで、相続人全員が合意して署名・押印することで効力が生まれます。

銀行の手続きでも提出を求められることがあります。

払い戻しとは、口座のお金を引き出して受け取ること

払い戻し(はらいもどし)とは、口座のお金を引き出して受け取ることです。

相続の場面では、亡くなった方の口座を解約し、受け取る方の口座へお金を移すことを「払い戻し」と呼びます。

全国銀行協会や法務局の案内では送り仮名のない「払戻し」と書かれますが、同じ意味です。

亡くなった方の口座は名義変更ではなく払い戻し

亡くなった方の銀行口座は名義変更ではなく、いったん解約して相続人の口座へお金を移す払い戻しになることを示した図解

「銀行口座の名義変更」という言葉で調べ始めた方は少なくありません。

車も携帯電話の契約も「名義変更」で引き継ぐイメージがあるからです。

ところが銀行口座の相続は、それとは異なる扱いになります。

口座の名前を書き換える扱いは原則としてない

銀行の預金口座は、預金者本人が使うことを前提に作られています。

そのため、亡くなった方の名義のまま別の人が使い続けるという扱いは、原則としてできません。

相続の場面では、口座をいったん解約し、受け取る方の口座へお金を移す「払い戻し」という手続きを経ることになります。

全国銀行協会が公開している相続手続きの案内でも、この手続きは一貫して「払戻し等」という表現で説明されています。

「名義変更」という言葉はどこにも出てきません。

法務局も同じ手続きを「被相続人名義の預金の払戻し手続」と呼んでいます。

公的な機関がどちらも「払戻し」という言葉を使っている点からも、これが正式な呼び名だと分かります。

亡くなったことを銀行が知ると出し入れは止まる

亡くなった方の口座は、銀行がその事実を知った時点で、入金・出金・振り込みなどの取引が原則として制限されます。

これを一般に「口座の凍結」と呼びます。

「凍結」という言葉を聞くと自動的に止まるように聞こえますが、実際には、家族が銀行に連絡したときや銀行側が訃報を知る機会があったときに取引が止まります。

この状態になると、家族であっても勝手にお金を引き出すことはできなくなります。

葬儀の費用など急ぎの支払いが必要な場合には別の方法があり、後の章で説明します。

「名義変更」で調べていた方へ、いま起きていることの整理

  • 口座の名前をそのまま書き換えることは、原則としてできない
  • 口座をいったん解約し、相続の手続きを経て、受け取る方の口座にお金が移る
  • この手続きのことを「払い戻し」と呼ぶ
  • 入口は、取引のあった金融機関への電話一本

相続手続きの流れは4段階、入口は銀行への電話

全国銀行協会が示している手続きの流れは、大きく4つの段階に分かれています。

それぞれの段階で何をするのかを先に把握しておくと、「今自分はどこにいるのか」が分かり、次に何をすればよいかを迷わず判断できます。

  • STEP1 取引のあった金融機関に「相続の手続きをしたい」と申し出る
  • STEP2 必要な書類をそろえる
  • STEP3 金融機関所定の相続手続書類に記入し、署名捺印して提出する
  • STEP4 払戻し等の手続きが行われる

STEP1 金融機関に相続の手続きを申し出る

最初の一歩は、亡くなった方が口座を持っていた銀行や信用金庫などに電話をして、「相続の手続きをしたい」と伝えることです。

「何と言えばいいか分からない」という方は、この一言だけ覚えておけば大丈夫です。

窓口の担当者が、次に必要なことを案内してくれます。

この時点で、口座の取引は原則として制限されます。

すでに口座が止まっている場合も、まず金融機関に連絡することが全体の起点になります。

STEP2 必要な書類をそろえる

金融機関に連絡すると、必要な書類の案内が送られてくるか、窓口で説明を受けられます。

ここで用意する書類の種類は、遺言書があるかどうか、相続人全員で話し合いをしたかどうかなど、4つの場合によって変わります。

ご自分がどれに当たるかは次の章で説明します。

STEP3 所定の相続手続書類に記入して提出する

書類がそろったら、金融機関が用意している「相続手続書類」という専用の書式に必要事項を記入します。

この書式は金融機関ごとに異なるため、市販のものや他の銀行のものは使えません。

記入が終わったら相続人が署名・押印(実印)をして、集めた書類と一緒に提出します。

相続人が複数いる場合は、全員の署名・押印が必要になることがほとんどです。

STEP4 払戻し等の手続きが行われる

提出した書類の内容が確認されると、口座の残高が受け取る相続人の口座へ振り込まれるか、窓口で現金として受け取れる形で完了します。

書類の確認には数日から数週間かかることがあります。

完了時期は金融機関によって異なるため、申し出の際に目安を確認しておくと安心です。

口座が複数あるときは金融機関ごとに連絡する

複数の銀行に口座があった場合は、それぞれの金融機関に別々に連絡することになります。

書式も金融機関ごとに異なるため、口座の数だけ同じ流れを繰り返します。

通帳やキャッシュカードが見つかった銀行はもちろん、取引があった可能性のある金融機関にも、念のため問い合わせてみると安心です。

投資信託など預金以外は手続きが別になる

銀行口座の預金以外に、投資信託や株式などの金融資産があった場合は、預金の払い戻しとは別の手続きが必要です。

証券会社や投資信託を扱っている窓口に、それぞれ確認することになります。

この記事では預金口座の手続きを中心に説明しています。

必要な書類は遺言書や協議書があるかで変わる

書類をそろえる前に、まず「ご自分の家がどの場合に当たるか」を確かめる必要があります。

ここを確認せずに動くと、集めた書類が足りなかったり、不要なものを用意してしまったりする二度手間が起きやすくなります。

分かれ方は大きく4つで、遺言書(いごんしょ・ゆいごんしょ)があるかどうか、遺産分割協議書があるかどうか、家庭裁判所の手続きを経たかどうかによって変わります。

なお、どの場合にも出てくるのが「印鑑証明書」です。

印鑑証明書(いんかんしょうめいしょ)とは、役所に登録した実印が本物であることを証明する書類のことで、この章では書類名として登場します。

取り方はあとの「相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書もそろえる」で説明します。

まず遺言書があるかどうかを確認する

遺言書とは、亡くなった方が生前に「自分の財産を誰にどのように渡すか」を書き残した書類のことです。

まず、亡くなった方の自宅や貴重品の保管場所に遺言書がないかを確認してみてください。

公証役場(こうしょうやくば)という公的な機関に預けられている場合もあります。

あるかどうか分からない段階でも、金融機関に「確認中です」と伝えれば、担当者が状況に応じて案内してくれます。

遺言書がある場合にそろえるもの

遺言書がある場合は、その内容に従って手続きを進めます。

必要になるのは、遺言書そのもの、亡くなった方の戸籍謄本または全部事項証明書(死亡の事実を確認するためのもの)、そして相続人または遺言執行者(ゆいごんしっこうしゃ)の印鑑証明書です。

公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)以外の遺言書には、家庭裁判所による「検認(けんにん)」という確認手続きが必要です。

検認を受けた証明として「検認調書謄本」または「検認済証明書」も一緒に提出します。

遺言執行者とは、遺言書の内容を実行するために指定された人です。

なお公正証書遺言とは公証役場で公証人が作成した遺言書で、この場合は検認が不要です。

遺言書はないが遺産分割協議書があるとき

遺言書はないものの、相続人全員で話し合い、誰が何を受け継ぐかをまとめた遺産分割協議書がすでにある場合です。

必要になるのは、遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印による押印があるもの)、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本等、相続人全員の戸籍謄本等、相続人全員の印鑑証明書です。

「出生から死亡まで」とあるのは、亡くなった方が過去に本籍を移していた場合などに、複数の戸籍謄本をつなげてそろえる必要があるためです。

この点は次の章で説明します。

協議書そのものの作り方は遺産分割協議書の書き方|記載例と5つの項目を解説にまとめています。

遺言書も遺産分割協議書もないとき

遺言書が見つからず、まだ相続人全員での話し合いも終わっていない場合です。

必要になるのは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本等、相続人全員の戸籍謄本等、相続人全員の印鑑証明書です。

書類の種類としては少なくなりますが、金融機関の所定書類への署名・押印の段階で相続人全員が関わる点は変わりません。

家庭裁判所の調停や審判を経たとき

相続人の間で話し合いがまとまらず、家庭裁判所の調停(ちょうてい)や審判(しんぱん)を経て遺産の分け方が決まった場合です。

必要になるのは、調停調書謄本または審判書謄本と、相続人の印鑑証明書です。

調停調書謄本・審判書謄本に確定の表示がない場合は、確定証明書も必要になります。

場合 状況 主な必要書類
1 遺言書がある 遺言書/検認調書等(公正証書遺言以外)/亡くなった方の戸籍謄本等/相続人または遺言執行者の印鑑証明書
2 遺言書はないが遺産分割協議書がある 遺産分割協議書/亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本等/相続人全員の戸籍謄本等/相続人全員の印鑑証明書
3 遺言書も遺産分割協議書もない 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本等/相続人全員の戸籍謄本等/相続人全員の印鑑証明書
4 家庭裁判所の調停調書・審判書がある 調停調書謄本または審判書謄本(+確定証明書)/相続人の印鑑証明書

どの場合も中心になるのは戸籍謄本と印鑑証明書

4つのうちどれに当たっても、ほぼ共通して登場するのが「戸籍謄本」と「印鑑証明書」の2種類です。

この2つが相続手続きの中心になると覚えておくと、書類集めの見通しが立てやすくなります。

戸籍謄本は出生から死亡まで連続してそろえる

戸籍謄本とは、誰の子どもで、誰と結婚し、いつ亡くなったかといった家族関係を公的に証明する書類のことです。

相続の手続きでは、亡くなった方の戸籍謄本を「出生から死亡まで連続してそろえる」ことが求められます。

これは、法定相続人が誰であるかを正確に確認するためです。

出生までさかのぼるのは、結婚や引っ越しなどで本籍地を変えるたびに戸籍が新しく作り直され、現在の戸籍謄本だけでは過去の家族関係をすべて確認できない場合があるためです。

本籍地を移した回数によっては、複数の役所から取り寄せることになります。

現在の本籍地の役所に「出生から死亡までの戸籍謄本が必要です」と伝えれば、どこからどこまでの書類が必要かを案内してもらえます。

相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書もそろえる

亡くなった方の分だけでなく、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書も必要になります。

相続人全員の戸籍謄本は、その人が相続人であることを証明するために使い、本籍地がある市区町村の役所の窓口で取得できます。

本籍地と住所が異なる場合は、郵送で請求することも可能です。

実印とは、住んでいる市区町村の役所に印鑑登録をした印鑑のことです。

印鑑証明書は、その印鑑登録をしている役所の窓口で取得します。

印鑑証明書には有効期限が設けられている場合があります。

金融機関によって「発行から3か月以内のもの」など条件が異なるため、書類を集める前に金融機関へ条件を確認しておくと安心です。

戸籍の束が厚くなるときは法定相続情報一覧図が使える

本籍地の移動が多かった場合や相続人の人数が多い場合は、集まる戸籍謄本の束がかなりの厚さになります。

複数の金融機関に同じ書類を提出するとなると、手間と費用がかさんでいきます。

そのようなときに役立つのが「法定相続情報一覧図(ほうていそうぞくじょうほういちらんず)の写し」です。

法定相続情報一覧図とは、相続関係をひとつの図にまとめたもので、法務局に申し出ると、その写しを無料で交付してもらえます。

この写しは、戸籍謄本の束の代わりとして使える公的な書類として認められています。

申し出は最寄りの法務局の窓口で行え、記載様式と記載例が法務局のウェブサイトに公開されています。

法定相続情報一覧図の写しでできること(法務局の案内より)

  • 交付の手数料は無料。必要な枚数を取得できる
  • 被相続人名義の預金の払戻し手続きに使える
  • 相続登記(不動産の名義の手続き)の申請にも使える
  • 相続税の申告や、年金等の手続きにも使える

必要な枚数分の写しを取得しておくと、戸籍謄本の束を何度もコピーしたり、原本を持ち回ったりする手間が省けます。

葬儀費用が先に必要なときは払戻し制度が使える

相続手続きが完了するまでの間、亡くなった方の口座からお金を動かすことは原則としてできません。

ところが葬儀の費用は、手続きが終わるよりずっと前に支払いが必要になります。

「口座は止まっているのに、葬儀社への支払いが迫っている」という状況は、相続の場面でよく起きます。

これに対応するために、法律によって定められた「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」という仕組みがあります。

2019年7月1日から使えるようになった仕組み

この制度は、2019年7月1日から施行された改正民法によって導入されました。

それ以前は相続人全員の合意がないと口座からお金を引き出せず、葬儀費用の支払いに困る例が多く見られました。

この制度ができたことで、相続人のひとりが単独で、一定の金額を払い戻せるようになりました。

払い戻せる金額は計算式で決まる

払い戻せる金額は、次の計算式で求めます。

相続開始時の預金額 × 3分の1 × 払い戻しを行う相続人の法定相続分

式だけでは分かりにくいので、数字の意味を見ていきます。

「相続開始時の預金額」は亡くなった日の時点でその口座にあった残高、「3分の1」は分け方が決まる前に動かせる範囲を法律が一律で区切ったもの、「法定相続分」は法律が定めたその人の取り分の目安です。

  • 口座の残高が300万円、相続人が配偶者と子ども1人の合計2人だったとする
  • この場合、配偶者の法定相続分は2分の1、子どもの法定相続分も2分の1
  • 配偶者が払い戻せる金額=300万円 × 3分の1 × 2分の1 = 50万円
  • 子どもが払い戻せる金額も同じく50万円

ただし、同じ金融機関から払い戻せる上限は150万円と定められています。

計算式で出た金額が150万円を超える場合は、150万円が上限になります。

窓口でこの制度を使いたいと申し出る

この制度を使うときは、金融機関の窓口で「遺産分割前の払戻し制度を使いたい」と申し出ます。

必要な書類は金融機関によって異なりますが、一般的には亡くなった方の戸籍謄本、相続人自身の戸籍謄本、印鑑証明書などが求められます。

前の章で説明した書類と重なる部分が多いため、書類集めと並行して進められます。

申し出の際に「葬儀費用の支払いに充てたい」と事情を伝えると、担当者が流れを案内してくれます。

それでも足りないときは家庭裁判所という方法がある

計算式で出た金額や150万円の上限では、葬儀費用をまかないきれない場合もあります。

そのようなときは、家庭裁判所に「仮払い(かりばらい)の申し立て」をするという方法があります。

家庭裁判所が認めれば、上限を超えた払い戻しができることがあります。

ただし申し立てには時間と手間がかかるため、まずは窓口での払戻し制度を検討してみてください。

制度を使っても相続手続き全体は進める必要がある

この制度はあくまで急ぎの費用に対応するための一時的な払い戻しで、これを使っても4段階の相続手続きは引き続き進めることになります。

払戻し制度を使って引き出した金額は、後の遺産分割の際に、その相続人がすでに受け取った分として計算に含まれます。

相続人どうしのやり取りが透明になるよう、何の費用に使ったかを記録しておくと安心です。

口座の残高が分かったら相続税がかかるかを確かめる

口座の残高が明らかになると、遺産の総額が少しずつ見えてきます。

このタイミングで多くの方が気になり始めるのが、「自分の家に相続税はかかるのだろうか」という点です。

相続税(そうぞくぜい)とは、亡くなった方から受け継いだ遺産に対してかかる税金のことです。

ただし、すべての相続に相続税がかかるわけではありません。

遺産の総額が一定の金額を下回る場合、相続税はかかりません。

まず基礎控除という仕組みを知る

相続税には「基礎控除(きそこうじょ)」という仕組みがあります。

「控除」とは差し引くという意味で、基礎控除とは遺産の総額からあらかじめ差し引ける金額のことです。

遺産の総額がこの金額より少なければ、相続税はかかりません。

基礎控除の計算式は次のとおりです。

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

この式は2つの部分でできています。

3,000万円の部分は、法定相続人が何人いても必ず引ける土台の金額です。

相続人がひとりでも10人でも、この3,000万円は変わりません。

600万円の部分は、法定相続人が1人増えるごとに600万円ずつ増えていく金額です。

つまり基礎控除とは、動かない土台と、人数で伸びる部分を足したものです。

法定相続人の人数ごとの金額を確認する

法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人だった場合、基礎控除は 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円 になります。

この場合、遺産の総額が4,800万円以下であれば、相続税はかかりません。

法定相続人の数 基礎控除の額
1人 3,600万円
2人 4,200万円
3人 4,800万円
4人 5,400万円

遺産の総額には預貯金以外も含まれる

ここで注意が必要なのは、基礎控除と比べる「遺産の総額」には、銀行口座の預貯金だけでなく、不動産や生命保険金なども含まれる場合があるという点です。

亡くなった方が自宅を持っていた場合、その土地と建物の評価額も遺産に含まれます。

生命保険金についても、受取人によっては遺産に含まれるかどうかの判断が必要になります。

そのため、口座の残高だけを見て「基礎控除より少ないから大丈夫」と判断するのは早計です。

すべての財産をあわせた総額で見ることになります。

相続税がいくらから発生するかの考え方は相続税はいくらから?基礎控除の計算と無税になる金額を解説で詳しく説明しています。

最終的な判断は税理士に確認する

基礎控除の考え方を知っておくことは、ご自分の家が大まかにどのくらいの規模に当たるかを把握するうえで役立ちます。

ただし、実際に相続税がかかるかどうか、申告が必要かどうかの最終的な判断は、税理士(ぜいりし)に確認するのが確実です。

遺産の評価の方法は財産の種類によって異なり、一般の方が正確に計算するのは難しい部分があります。

また、相続税の申告には期限があり、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。

「相続税がかかるかどうか分からない」という段階であっても、税理士に相談すること自体は難しくありません。

口座の残高が分かって遺産の全体像が見えてきたタイミングで、一度相談してみると安心です。

まずは取引のある銀行に問い合わせてみよう

亡くなった方の口座は「名義変更」ではなく、解約して相続人の口座へお金を移す「払い戻し」の手続きになります。

手続きは4段階に分かれ、入口は取引のあった金融機関への電話です。

必要な書類は、遺言書があるかどうか、遺産分割協議書があるかどうかによって4つに分かれます。

どの場合でも共通して必要になるのが、戸籍謄本と印鑑証明書の2種類です。

葬儀費用の支払いが先に必要なときは、遺産分割前の払戻し制度を使うことで、手続きの完了を待たずに一定の金額を引き出せます。

「何から始めればいいか分からない」という方は、まず取引のあった銀行に問い合わせて「相続の手続きをしたい」と伝えることだけ覚えておいてください。

書類を完璧にそろえてから連絡しなければならないわけではなく、遺言書があるかどうかまだ分からない状態でも動き始めることができます。

口座の残高が分かって遺産の全体像が見えてきたら、次に気になるのが相続税です。

相続税がかかるかどうか、申告が必要かどうかの判断は、税理士でなければ断定的なアドバイスを行うことができません。

名義変更を終えて遺産の総額が見えてきた段階で、判断に迷う点だけ専門家に確認しておくと安心です。

参考リンク:

相続が初めてでよく分からない。
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