
【ひな形つき】遺産分割協議書の書き方|
記載例と5つの項目を解説
【2026年7月更新】
親が亡くなって相続の手続きを始めたものの、遺産分割協議書の書き方が分からない、ひな形はどこかにないのかと調べ始めた方も多いのではないでしょうか。
先に結論をお伝えします。
遺産分割協議書には、決まった書式がありません。
国税庁も「遺産分割協議書の書式は特に定まっているわけではありません」とした上で、参考として記載例を示しています。
必要なことが順番に書いてあれば、手書きでもパソコンで作っても構いません。
書く内容は5つです。
表題、亡くなった方のこと、話し合って決めたという一文、誰が何を受け取るか、そして作った日と全員の署名とハンコ。
この順番で埋めていけば、下書きはその日のうちに形になります。
その見本も、探し回る必要はありません。
この記事には、法務局と国税庁が公開しているひな形と記載例の実物、その入手先も載せています。
どちらも国の機関が示しているもので、誰でも無料で見られます。
ところが調べてみると、記事には見慣れない言葉が次々に出てきて、何のことか分からないまま画面を閉じてしまった、ということが起こりがちです。
この記事は、そうした言葉がよく分からないという方に向けても、やさしく解説しています。
最初の章で必要な言葉をまとめて押さえてから、書き方の話へ進みます。
この先では、言葉の意味から順に、書き方の5つの項目、不動産や預貯金といった財産ごとの書き分け、そして相続税の手続きがある場合に気をつけたい期限までを見ていきます。
読み終わるころには、まず何から書けばよく、次にどの書類を集めればいいのかが見えているはずです。
この記事を読んで分かること
- 法務局と国税庁の記載例の実物と入手先
- 書類に出てくる基本用語の意味
- 表題から署名押印までの記入順
- 不動産や預貯金を特定するために要る情報
ぜひ最後までお読みください!
目次
まず押さえたい遺産分割協議書の5つの言葉

遺産分割協議書を書き始める前に、5つの言葉の意味を押さえておきます。
意味を知らないまま書き始めると、「この欄に書くのは誰のこと?」と手が止まります。
逆に言えば、この5つさえ頭に入ってしまえば、あとは見本を写すだけです。
| 言葉 | ひとことで言うと |
|---|---|
| 遺産 | 亡くなった方が残した財産のすべて(借金も含む) |
| 法定相続人 | 民法で相続する権利が定められている人 |
| 遺産分割協議 | 相続人全員で分け方を決める話し合い |
| 被相続人 | 亡くなった方のこと(財産を残した側) |
| 実印・印鑑証明書 | 役所に登録したハンコと、それを証明する書類 |
「遺産」は亡くなった方が残した財産のすべて
遺産とは、亡くなった方が残した財産のすべてです。
預貯金だけではありません。
実家の土地・建物、株式、自動車なども含まれます。
さらに、借金や住宅ローンのようなマイナスの財産も遺産の一部です。
「お金に換算できるものは全部」と考えておくと、数え漏れが防ぎやすくなります。
「相続人」と「法定相続人」は何が違うのか
相続人とは、亡くなった方の財産を受け取る権利がある人のことです。
そのうち、民法によって相続する権利が定められている人を「法定相続人」と呼びます。
配偶者(夫・妻)は常に法定相続人になります。
それ以外は、子どもが第1順位、子どもがいない場合は父母が第2順位、父母もいない場合は兄弟姉妹が第3順位です。
字が似ていて混同しやすいのですが、この記事で大事なのは「法定相続人が全員そろっているか」です。
1人でも欠けていると、銀行や法務局で受け付けてもらえません。
「遺産分割協議」は分け方を決める話し合い
遺産分割協議とは、相続人全員で「誰が何を受け取るか」を話し合って決めることです。
全員が合意できれば、法定相続分(民法が定める割合)のとおりに分けなくても構いません。
たとえば「不動産は長男、預貯金は次男と長女で半分ずつ」のように、話し合いで自由に決めることができます。
この話し合いの結果を書き残した書類が、遺産分割協議書です。
「被相続人」は亡くなった方を指す言葉
亡くなった方のことを、書類の中では「被相続人(ひそうぞくにん)」と呼びます。
「相続人」と1字しか違わないため混同しがちですが、意味は正反対です。
財産を受け取る側が相続人、財産を残した側が被相続人です。
遺産分割協議書では、「被相続人 ○○○○」という形で冒頭に亡くなった方の氏名を書きます。
「実印」と「印鑑証明書」がセットで必要な理由
実印とは、市区町村の役所に登録したハンコのことです。
普段使っている認印(みとめいん)とは別のものです。
遺産分割協議書には、相続人全員が実印を押します。
印鑑証明書とは、「このハンコが確かに○○さんの実印です」と市区町村が証明した書類です。
実印だけでは本物かどうかを確かめられないため、セットで添えて初めて書類として通用します。
実印を持っていない場合は、まず役所で「印鑑登録」という手続きをすると、印鑑証明書を取れるようになります。
相続人全員の合意を書き残すのが遺産分割協議書

遺産分割協議書とは、「相続人全員で話し合って、こう分けることに決めました」という合意の内容を書き残した書類です。
口頭の話し合いだけでは、あとから「そんなことは言っていない」といった行き違いが起きることがあります。
全員が署名し実印を押した書類として残し、決めた内容をあとから動かせない形にするのが、この書類の役割です。
不動産・預貯金・相続税の3つの場面で使う
遺産分割協議書は、相続に関わる主に3つの場面で必要になります。
- 法務局での不動産の名義変更:実家の土地や建物を誰かの名義に変える手続き(相続登記)で提出します
- 銀行での預貯金の払い戻し・名義変更:求められる書類は金融機関によって違いますが、多くの場合に提出を求められます
- 税務署への相続税の申告:申告(自分で書類を作って税務署に出す手続き)をする際に、写しを添付します
このうち不動産の名義変更には、期限があります。
法務省によると、相続登記は令和6年(2024年)4月1日から申請が義務化されました。
相続によって不動産を取得した相続人は、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」に申請する必要があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。
施行日より前の相続も対象です。
まだ名義変更をしていない実家がある場合は、令和9年(2027年)3月31日までに手続きを済ませる必要があります。
作り始めるのは相続人と財産が確定してから
遺産分割協議書は、2つのことが確定してから作り始めます。
ひとつめは、相続人が全員確定していること。
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて取り寄せて、相続人が何人いるかを確認します。
知らなかった相続人があとから見つかると、協議書を作り直すことになります。
ふたつめは、財産の一覧が確定していること。
不動産・預貯金・株式など、遺産の内容を把握してから書き始めます。
この2つがそろう前に書き始めると、後から修正や作り直しが起きやすくなります。
相続人が1人でも欠けると成立しない
遺産分割協議書は、法定相続人の全員が合意して署名・押印しなければ、法律上有効になりません。
「連絡がつかない相続人がいる」「署名をもらいにくい相続人がいる」という場合でも、その人を除いて書類を作ることはできません。
連絡がつかない相続人については、家庭裁判所に「不在者財産管理人」(行方が分からない人の代わりに財産を管理する人)の選任を申し立てるという方法があります。
また、相続人の中に未成年の子どもがいる場合、親が代わりに署名することはできません。
国税庁の記載例にも、未成年者がいる場合は家庭裁判所で「特別代理人」(その子の代わりに協議に参加する人)を選任する必要があると注記されています。
遺言書がある場合の扱い
亡くなった方が遺言書を残していた場合、原則として遺言書の内容が優先されます。
協議書を作らなくても、遺言書に基づいて相続手続きを進めることができます。
ただし相続人全員が合意すれば、遺言書と異なる分け方をすることも可能で、その場合は協議書を作成します。
遺言書の有無を先に確かめてから、協議書を作るかどうかを決めます。
公正証書遺言の有無は公証役場で、法務局の保管制度を使った自筆証書遺言は法務局で確認できます。
ひな形は法務局と国税庁が公開している
遺産分割協議書のひな形を探すために、有料のサービスを使ったり、専門家に問い合わせたりする必要はありません。
法務局と国税庁が、それぞれ記載例を無料で公開しています。
2つの記載例は想定している使い道が違います。
ここで違いを整理します。
2つの記載例は使い道が違う
- 法務局の記載例=不動産の名義変更(相続登記)に使う想定
- 国税庁の記載例=相続税の申告書に添える想定
- 書類の基本的な組み立ては共通。実家の土地・建物があるなら法務局、相続税の申告があるなら国税庁を手元に開く
国税庁の記載例は相続税の申告に添える想定
国税庁は、相続税の申告書に添付する書類のひとつとして、遺産分割協議書の記載例を公開しています。
この記載例には、「遺産分割協議書の書式は特に定まっているわけではありませんが、参考のために一つの記載例を示せば、次のとおりです」という一文が添えられています。
国が公式に「書式は自由でよい」と示しているわけです。
同じ記載例には、押印する印は住所地の市区町村長の印鑑証明を受けた印である、という注記もあります。
実印と印鑑証明書がセットで必要になる根拠が、ここに書かれています。
実物が次の記載例です。
相続人ごとに取得する財産を分け、不動産・株式・預金・現金・借入金まで載っています。

出典:国税庁「相続税の申告のしかた(令和6年分用)」(該当部分を切り出して掲載)
記載例は国税庁「相続税の申告書等の書き方(令和6年版)」のページで見られます。
法務局の記載例は不動産の名義変更に使う想定
法務局は、不動産の相続登記に使う書類として、遺産分割協議書の記載例を公開しています。
横書きで、実家の土地や建物の書き方が具体的に示されているのが特徴です。

出典:法務局「相続登記申請手続のご案内(遺産分割協議編)」(法務省ウェブサイト・該当部分を切り出して掲載)
様式は法務局「不動産登記の申請書様式について」のページの「遺産分割」からWordとPDFで入手できます。
手書きとパソコンのどちらで作っても有効
遺産分割協議書は、手書きでもパソコンで作成しても、どちらでも有効です。
書式が自由である以上、作り方も問いません。
パソコンで作る場合は、Wordなどの文書作成ソフトで記載例の組み立てをまねて入力します。
印刷したあとに、相続人全員が住所と氏名を自筆で書き、実印を押します。
手書きの場合は、黒のボールペンまたは万年筆を使います。
摩擦で消えるタイプのボールペンは、内容が消えるおそれがあるため向きません。
遺産分割協議書の書き方は5つの項目でできている
遺産分割協議書は、次の5つの項目を順番に書いていけば完成します。
- 表題
- 亡くなった方の情報
- 合意した旨の一文
- 誰が何を受け取るか
- 作成日・署名・実印
この順番は、どちらの記載例も共通です。
見本を横に開き、上から順番に埋めていくだけです。
表題に「遺産分割協議書」と書く
用紙の一番上の中央に、「遺産分割協議書」と書きます。
これが書類のタイトルです。
ほかの言葉にする必要はなく、この6文字をそのまま書けば十分です。
亡くなった方の氏名・死亡日・本籍を書く
表題の下に、亡くなった方(被相続人)の情報を書きます。
書く内容は次の4つです。
- 氏名
- 亡くなった日(死亡年月日)
- 本籍
- 最後の住所
「被相続人 ○○○○は、令和○年○月○日に死亡した。」という形で書くのが一般的です。
本籍と最後の住所は、亡くなった方の戸籍謄本や住民票の除票(じょひょう=亡くなった方の住民票の記録)に書かれています。
どちらも市区町村の窓口で取れます。
全員で話し合って決めたという一文を入れる
「相続人全員で話し合い、次のとおり遺産を分割することに合意した」という趣旨の一文を入れます。
記載例では「上記被相続人の遺産について、共同相続人全員で分割協議を行った結果、各自が次のとおり遺産を取得することに合意した」のような形で書かれています。
一字一句を同じにする必要はなく、「全員で協議して合意した」という意味が伝わる文であれば問題ありません。
誰がどの財産を受け取るかを書く
誰がどの財産を受け取るかを、財産ごとに分けて書きます。
この項目が、遺産分割協議書の中心になる部分です。
「相続人 ○○○○は、次の財産を取得する。」に続けて、その人が受け取る財産の内容を具体的に並べます。
相続人が複数いる場合は、人ごとに同じ書き方を繰り返します。
財産の種類によって書き方が変わります。
不動産・預貯金・株式それぞれの書き方は、次の章で説明します。
作成日と全員の住所・氏名・実印を入れる
最後に、作成した日付を書き、相続人全員が住所と氏名を記入して実印を押します。
作成日は、話し合いをした日ではなく、最後に押印が完了した日を書きます。
住所と氏名は、相続人全員が自筆で書きます。
パソコンで作成した書類であっても、住所と氏名の部分は手書きにするのが一般的です。
押印は実印を使い、認印では手続きに使えません。
相続人全員の印鑑証明書を添える
書類が完成したら、相続人全員の印鑑証明書を添えます。
協議書だけでは実印が本人のものかどうかを確かめられないため、セットで提出して初めて手続きに使えます。
印鑑証明書は、各相続人が自分の住所地の市区町村窓口で取ります。
マイナンバーカードがあればコンビニでも取れます。
銀行や法務局によっては「発行から3か月以内のもの」を求められることがあるため、手続きの直前に取るほうが安心です。
原本は手続きをする窓口の数だけ用意する
遺産分割協議書は、相続手続きをする窓口の数だけ原本を作るのが基本です。
法務局・銀行・証券会社など、それぞれの窓口で原本の提出を求められることがあります。
コピーでは受け付けてもらえない場合があるため、窓口の数を数えて、その分だけ同じ書類を用意し、全員に署名・押印してもらうと手間が省けます。
書き間違えたときは二重線と訂正印で直す
書き間違えた場合は、修正液や修正テープは使いません。
間違えた箇所に二重線を引き、その近くに訂正印(実印)を押して、正しい内容を書き加えます。
パソコンで作成した場合は、直した内容で印刷し直し、全員にあらためて署名・押印してもらう方法が確実です。
あとから財産が見つかったときに備える一文
書類の末尾に、「本協議書に記載のない財産が後日判明した場合は、別途協議して定める」という趣旨の一文を入れておく方法があります。
手続きを進める中で、把握していなかった預貯金口座が見つかることがあります。
この一文があると、新たに見つかった財産をあらためて話し合う根拠が書類に示され、後の行き違いを防ぎやすくなります。
財産の書き方は不動産・預貯金・株式で決まりが違う
遺産分割協議書の中で「誰が何を受け取るか」を書く部分は、財産の種類によって書き方が変わります。
「実家の不動産を長男が受け取る」と書くだけでは足りません。
どの不動産なのかを特定できる情報を、決まった形で書く必要があります。
預貯金も同じで、「○○銀行の口座」だけでは受け付けてもらえません。
| 財産の種類 | 書き写す情報 | 確認する書類 |
|---|---|---|
| 不動産 | 所在・地番・地目・地積/家屋番号・構造・床面積 | 登記事項証明書 |
| 預貯金 | 金融機関名・支店名・預金の種類・口座番号 | 通帳・キャッシュカード |
| 株式 | 証券会社名・支店名・口座番号・銘柄・株数 | 取引残高報告書 |
| 現金 | 金額 | 実際に確認する |
| 自動車 | 自動車登録番号・車台番号 | 車検証 |
不動産は登記事項証明書のとおりに書き写す
不動産は、法務局が管理している「登記事項証明書(とうきじこうしょうめいしょ)」に書かれているとおりに記載します。
登記事項証明書とは、その不動産の公式な情報が記録された書類です。
住所の表示とは違う書き方の場合があるため、手元に用意して、書いてある内容をそのまま写します。
土地であれば、所在(○○市○○町○丁目)・地番(○○番○)・地目(宅地など)・地積(○○.○○平方メートル)を書きます。
建物であれば、所在・家屋番号・種類(居宅など)・構造(木造瓦葺2階建など)・床面積を書きます。
とくに「所在」と「地番」は混同しやすい部分です。
普段使っている住所表示(○丁目○番○号)と地番は別の番号になっていることが多く、登記事項証明書に書かれている地番をそのまま使います。
登記事項証明書は、法務局の窓口またはオンラインで取れます。
法務省が公表している手数料は、書面請求で1通600円です。
オンラインで請求するとこれより安くなります。
預貯金は金融機関名・支店名・口座番号まで書く
預貯金は、どの口座かを特定できるだけの情報を書きます。
「○○銀行の預金」という書き方では足りず、支店名と口座番号まで必要です。
「○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○」という形で書くのが一般的です。
口座番号は、通帳の表紙や1ページ目に書かれています。
残高を書く必要はありません。
「この口座の預金全額を相続人○○○○が取得する」という形で書きます。
残高は日々動くため、金額を書き込むとかえって食い違いが起きやすくなります。
口座が複数ある場合は、口座ごとに同じ形で並べます。
1つでも漏れると、その口座の手続きだけを別に進めることになりやすいため、通帳は全部そろえてから書き始めます。
株式は証券会社名・銘柄・株数で特定する
株式は、証券会社の口座で管理されているものと、株主名簿で管理されているものがあります。
いずれの場合も、「○○証券○○支店 口座番号○○○○○○○○ ○○株式会社 普通株式○○○株」という形で、どの株式かを特定できるように書きます。
株式の詳細は、証券会社から届く取引残高報告書で確かめられます。
どの証券会社に口座があったか分からない場合は、郵便物や通帳の引き落とし履歴が手がかりになります。
借金は書いても債権者には効力が及ばない
住宅ローンや借金などマイナスの財産も遺産に含まれますが、協議書に書いても、お金を貸している側(債権者)との関係では効力が生じません。
たとえば「住宅ローンは長男が引き継ぐ」と書いても、銀行が承諾しなければ、ほかの相続人も返済の義務を負い続けます。
マイナスの財産は、債権者との間で別に手続きが必要になる点を頭に入れておくと、あとで慌てずに済みます。
生命保険金は原則として遺産分割の対象にならない
見落とされやすいのが、生命保険の死亡保険金の扱いです。
受取人が指定されている死亡保険金は、その受取人が自分の権利として受け取るお金と扱われます。
そのため原則として遺産分割の話し合いで分ける対象にはならず、協議書にも書きません。
「保険金も遺産だから入れておこう」と書いてしまうと、実態と合わない書類になります。
一方で、相続税の計算では扱いが変わります。
国税庁は、亡くなった方が保険料を負担していた死亡保険金について「相続等により取得したとみなされて、相続税の課税対象となります」としています。
分ける対象ではないけれど、税金の計算では数に入る、という二段構えです。
死亡保険金の扱いは2つに分けて考える
- 遺産分割の話し合い=受取人が指定されていれば対象外。協議書には書かない
- 相続税の計算=課税の対象になる(国税庁タックスアンサーNo.4114)
- 非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」
相続税が軽くなる仕組みは期限内の分割が条件になる
遺産分割協議書を後回しにしていると、相続税の面で思わぬ負担が生じることがあります。
相続税には税額を大きく減らせる仕組みがありますが、その多くが「期限内に遺産分割を終わらせていること」を条件にしているためです。
申告期限は亡くなったと知った日の翌日から10か月
相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月です。
たとえば1月5日に亡くなったことを知った場合、申告期限は同じ年の11月5日になります。
この期限までに、申告書の提出と税額の納付を済ませます。
10か月は長いように思えますが、相続人の確定・財産の調査・分け方の話し合い・書類の準備と、やることが次々に重なります。
なお、相続税がそもそもかかるかどうかの見当をつけたい方は、相続税はいくらから?基礎控除の計算と無税になる金額を解説で計算の流れを整理しています。
配偶者の税額軽減は期限内の分割が条件
配偶者(夫または妻)が遺産を相続する場合、「配偶者の税額軽減」という仕組みがあります。
配偶者が受け取った遺産のうち、1億6,000万円か配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までは相続税がかからないというものです(国税庁タックスアンサーNo.4158)。
ただし、この仕組みを使うには、申告期限までに遺産分割が終わっていることが条件です。
国税庁も、申告期限までに分割されていない財産は税額軽減の対象にならないとしています。
適用を受けるには、税額がゼロになる場合でも申告書の提出が必要です。
小規模宅地等の特例も期限内の分割が必要
実家の土地を相続する場合に関係が深いのが、「小規模宅地等の特例」です。
一定の条件を満たす土地について、相続税の計算に使う評価額を減らせる仕組みで、自宅として使っていた土地であれば330平方メートルまでの部分の評価額を80%減らせます(国税庁タックスアンサーNo.4124)。
この特例も、原則として申告期限までに遺産分割が終わっていることが必要です。
土地を誰が相続するかが決まっていない状態では適用できません。
適用には、申告書への記載と明細書などの添付も求められます。
間に合わないときは分割見込書を提出する
やむを得ない事情で、申告期限までに遺産分割が間に合わないこともあります。
その場合でも、特例が永久に使えなくなるわけではありません。
「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を申告書と一緒に提出しておくと、申告期限から3年以内に分割が終わった場合に、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使える道が残ります。
分割が終わっていない状態のまま申告すると、国税庁が説明しているとおり、こうした特例が適用できない申告になります。
申告書には協議書の写しと印鑑証明書を添える
相続税の申告書を提出する際には、遺産分割協議書の写しと、相続人全員の印鑑証明書を添付します。
協議書が添えられていなければ「分割が終わっていない」とみなされ、特例が適用されません。
協議書の完成と印鑑証明書の取得は、申告期限に合わせて予定に組み込んでおく必要があります。
税額の計算や申告の要否は税理士の領域
相続税の申告が自分のケースで必要かどうか、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が使えるかどうかの判断は、財産の内容や相続人の状況によって変わります。
この記事でお伝えできるのは、仕組みの概要までです。
書類集めから申告までの全体の流れを知りたい方は、相続税を自分で申告する方法|書類の集め方と手順・実費をやさしく解説もあわせて参考になります。
見本と手順を確認して下書きから始めよう
遺産分割協議書に何をどの順番で書けばよいかが、おおよそ見えてきたのではないでしょうか。
書く内容は5つです。
表題、亡くなった方の情報、合意した旨の一文、誰が何を受け取るか、そして作成日と全員の署名・実印。
書式は自由で、手書きでもパソコンでも構いません。
法務局と国税庁が記載例を公開していますので、どちらかを画面に開きながら、自分の家の情報を当てはめて書き写していくのが確実です。
下書きが形になったら、次は書類の取り寄せです。
相続人全員の印鑑証明書と、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本を、市区町村の窓口で取り寄せます。
郵送でも請求できます。
進めていく中で、「この書き方で合っているだろうか」「相続税の申告は自分の家でも必要なのか」と迷う場面も出てきます。
とくに税額の計算や申告が必要かどうかの判断は、税理士でなければ断定的なアドバイスを行うことができません。
らくサポでは、電話・LINEから相続を扱う税理士への取り次ぎを行っていますので、迷う点だけを確かめる使い方もできます。
まずは見本を横に開いて、表題から順番に書き始めてみてください。
下書きが一度形になれば、あとは確かめながら整えていけます。
参考リンク:

