
相続税の配偶者控除とは?
1億6000万円まで無税になる仕組みと申告の注意点を解説
【2026年7月更新】
「亡くなった配偶者から遺産を受け継ぐとき、相続税の配偶者控除を使えば税金はかからない」。
そう聞いたことはあっても、「うちの場合は本当にそうなのか」までは分からないまま、気になって調べ始めた方も多いのではないでしょうか。
ところが相続税のことを調べていると、「配偶者控除」「法定相続分」「申告」といった言葉が説明もなく次々に出てきて、何のことかよく分からない。
そんな経験をされた方もいるかもしれません。
この記事は、そうした専門用語がよく分からないという方に向けても、やさしく解説しています。
最初の章で必要な言葉をまとめて押さえてから、本題に進みます。
結論からお伝えします。
残された配偶者が、亡くなった配偶者から相続した遺産には、「1億6,000万円」か「残された配偶者の法定相続分にあたる金額」の、どちらか多い方まで相続税がかからない仕組みがあります。
一般に「配偶者控除」と呼ばれますが、国税庁での正式な名前は「配偶者の税額軽減」といいます(国税庁タックスアンサーNo.4158)。
ただし、ひとつだけ見落としやすい落とし穴があります。
この仕組みは、税額が0円になる場合でも、申告書を提出して初めて使えるものです。
「かからないなら何もしなくていい」わけではありません。
この記事では、まず言葉の意味を押さえ、配偶者控除で無税になる金額の考え方、配偶者の法定相続分の決まり方、そして申告や二次相続の注意点までを、順番に整理しました。
なお、実際の税額計算や、申告が必要かどうかの最終的な判断は、税理士の役割です。
この記事が担うのは、専門家に相談すべきかどうかの見当をつけるところまでです。
読み終えたあとには、配偶者の法定相続分を確認して、無税になりそうな範囲を手元の数字と見比べるところから動き出せるはずです。
この記事を読んで分かること
- 配偶者控除と所得税の控除の違い
- 1億6,000万円まで無税になる仕組み
- 家族構成で変わる法定相続分の割合
- 税額0円でも申告が必要な理由
ぜひ最後までお読みください!
目次
まず押さえたい配偶者控除の4つの言葉

相続税の話を調べていると、知らない言葉がいくつも出てきて、途中で読む気が失せてしまうことがあります。
この章では、この先を読み進めるうえで欠かせない4つの言葉を、先にまとめて押さえておきます。
難しい定義は後回しにして、「なんとなくイメージできる」状態になることをまず目指してみてください。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 遺産 | 亡くなった方が残した財産のすべて |
| 相続人 | 遺産を受け取る人 |
| 法定相続人 | 民法で相続人になると決められている人 |
| 控除 | 差し引くこと |
遺産は亡くなった方が残した財産のこと
遺産とは、亡くなった方が残した財産のすべてです。
預貯金だけではありません。
自宅や土地といった不動産、株式や投資信託、生命保険の死亡保険金なども遺産に含まれます。
借入金や未払いの税金といったマイナスの財産も遺産の一部で、プラスの財産から差し引いて考えます。
相続税の話に出てくる「遺産の総額」とは、これらを合計した金額のことだと思ってください。
相続人と法定相続人は少し違う
相続人とは、遺産を受け取る人のことです。
そのうち「法定相続人」は、民法で相続人になると決められている人を指します。
配偶者や子どもなど、誰が該当するかは家族構成によって決まっていて、話し合いで増やしたり減らしたりできるものではありません。
この法定相続人が誰で何人いるかは、あとで出てくる配偶者控除の計算にそのまま関わってきます。
相続税の話で法定相続人という言葉が何度も出てくるのは、そのためです。
控除は「差し引く」という意味
「控除」とは、差し引くという意味の言葉です。
税金の話では「◯◯控除」という言葉が何度も出てきますが、どれも「ここまでは差し引いてよい」という枠のことだと考えれば大丈夫です。
この記事の主役になる「配偶者控除」も、その控除のひとつだと思ってください。
相続税の配偶者控除は正式には「配偶者の税額軽減」

「配偶者控除」という言葉には、実はもうひとつの顔があります。
ここを整理しておかないと、調べているうちに話がかみ合わなくなってしまうため、先に混同を解いておきます。
所得税の配偶者控除とはまったく別の制度
「配偶者控除」という言葉は、毎年の給料にかかる所得税にも登場します。
年末調整や確定申告で耳にする「配偶者控除」がそれです。
この記事で扱う相続税の配偶者控除は、その所得税の配偶者控除とはまったく別の制度です。
名前が似ているために混同されやすいのですが、根拠となる法律も、手続きも、対象となる金額の規模もまったく異なります。
| 所得税の配偶者控除 | 相続税の配偶者の税額軽減 | |
|---|---|---|
| いつ使うか | 毎年(年末調整・確定申告) | 相続が発生したとき(一度限り) |
| 何を減らすか | 所得税の負担 | 相続税の負担 |
| 根拠となる法律 | 所得税法 | 相続税法(国税庁No.4158) |
| 対象になる人 | 生計を共にする配偶者 | 戸籍上の配偶者 |
国税庁での正式名称は「配偶者の税額軽減」
相続税における配偶者の控除は、国税庁では「配偶者の税額軽減」という名称で案内されています(国税庁タックスアンサーNo.4158)。
「軽減」とは税額を減らすという意味で、残された配偶者が亡くなった配偶者から相続した遺産のうち一定の金額まで、相続税をゼロにする仕組みです。
「控除」「軽減」どちらの言葉で呼ばれることもありますが、この記事では以降、なるべく「配偶者の税額軽減」という言葉を使っていきます。
対象になるのは戸籍上の配偶者だけ
配偶者の税額軽減が使えるのは、法律上の婚姻関係にある配偶者に限られます。
内縁関係や事実婚のパートナーは、たとえ長年連れ添っていたとしても、この制度の対象外です。
反対に、戸籍上の配偶者であれば、婚姻期間の長い短いは問われません。
次の章では、この制度で具体的にいくらまで非課税になるのかを見ていきます。
配偶者は1億6,000万円まで相続税がかからない
配偶者の税額軽減では、残された配偶者が亡くなった配偶者から相続した遺産のうち「1億6,000万円か、残された配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い方」まで、相続税がかかりません。
少し言葉が難しく感じるかもしれませんが、要するに「1億6,000万円」と「法定相続分にあたる金額」を比べて、大きい方が非課税の上限になる、ということです。
「1億6,000万円」が最低のラインになる
遺産の総額がいくらであっても、残された配偶者が相続した分については、まず1億6,000万円までは相続税がかかりません。
つまり、残された配偶者が受け取った遺産が1億6,000万円以内であれば、それだけでその配偶者の相続税はゼロになります。
多くのご家庭では、この1億6,000万円という金額だけでも、残された配偶者に相続税がかからないケースは少なくありません。
遺産が多い家庭は法定相続分相当額が上限になる
一方で、遺産が非常に多いご家庭では、「配偶者の法定相続分相当額」の方が1億6,000万円より大きくなることがあります。
その場合は、大きい方である「法定相続分相当額」までが非課税の上限になります。
「法定相続分相当額」がいくらになるのかは、家族構成によって変わります。
次の章で、その決まり方を見ていきます。
具体的な数字で考えるとイメージしやすい
言葉だけでは分かりにくいので、一般的な数字で考えてみます。
たとえば、遺産の総額が1億円で、相続人が残された配偶者と子ども2人の場合を考えてみます。
残された配偶者が法定相続分どおりに2分の1(5,000万円)を相続したとすると、この5,000万円は1億6,000万円の範囲内なので、その配偶者にかかる相続税はゼロになります。
仮に残された配偶者が遺産のすべて(1億円)を相続した場合でも、1億6,000万円以内におさまっているため、やはりその配偶者の相続税はかかりません。
多くのご家庭では、遺産の総額が1億6,000万円を超えないかぎり、残された配偶者が相続した分については相続税がかからない計算になります。
ただし、どちらの場合も、税額をゼロにするには相続税の申告書を提出することが前提になります。
この点はあとの章でくわしく取り上げます。
実際にご自身の場合はいくらになるのか、相続税かんたんシミュレーターなら、遺産のおおよその金額とご家族の人数を入れるだけで、その場で概算が分かります。
配偶者の法定相続分は家族構成で変わる
前の章で「法定相続分相当額」という言葉が出てきました。
この金額は、遺産の総額に「配偶者の法定相続分の割合」をかけることで求められます。
そして、その割合は、配偶者と一緒に相続する人が誰かによって変わります。
法定相続分は「誰と一緒に相続するか」で決まる
民法では、相続人の組み合わせに応じて、それぞれの取り分の割合があらかじめ定められています。
これを法定相続分といいます(国税庁タックスアンサーNo.4132)。
配偶者は常に相続人になりますが、配偶者以外に誰が相続人として加わるかによって、配偶者の割合が変わります。
| 相続人の組み合わせ | 配偶者の法定相続分 | それ以外の相続人の合計 |
|---|---|---|
| 配偶者と子ども | 2分の1 | 2分の1(子どもで分け合う) |
| 配偶者と父母など(子どもがいない場合) | 3分の2 | 3分の1(父母などで分け合う) |
| 配偶者と兄弟姉妹(子も父母もいない場合) | 4分の3 | 4分の1(兄弟姉妹で分け合う) |
| 配偶者だけ(他に相続人がいない場合) | すべて | ― |
子どもが複数いる場合でも、配偶者の取り分は2分の1のままです。
子どもたちは残りの2分の1を人数で等分します。
「子どもがいないから配偶者の取り分も2分の1」ではない点が、間違えやすいところです。
法定相続分相当額の計算は掛け算ひとつ
配偶者の法定相続分相当額は、次の式で求められます。
遺産の総額 × 配偶者の法定相続分の割合 = 法定相続分相当額
たとえば遺産が2億円で、子どもがいる場合(配偶者の割合は2分の1)なら、法定相続分相当額は1億円です。
1億6,000万円と1億円を比べると1億6,000万円の方が大きいため、この家庭の非課税の上限は1億6,000万円になります。
遺産が4億円であれば、法定相続分相当額は2億円です。
今度は2億円の方が1億6,000万円より大きいため、上限は2億円になります。
子どもがいないご家庭の例も見ておきます。
子どもがおらず、亡くなった方の父母が健在の場合、配偶者の法定相続分は3分の2です。
遺産が9,000万円なら、法定相続分相当額は6,000万円になります。
この場合も1億6,000万円の方が大きいため、上限は1億6,000万円です。
このように、遺産が数億円という規模でなければ、多くのご家庭では1億6,000万円が上限として働くことになります。
自分の家の上限は3つの手順で見当がつく
前の章の内容とあわせると、自分の家の非課税の上限は、次の手順で見当をつけられます。
- 家族構成から、配偶者の法定相続分の割合を確認する
- おおよその遺産の総額にその割合をかけて、法定相続分相当額を出す
- その金額と1億6,000万円を比べ、大きい方が非課税の上限になる
手元の遺産のおおよその総額と、この上限を見比べれば、「うちは残された配偶者の分については無税に収まりそうか」の見当がつきます。
細かい評価まで求めなくても、まずはこの大枠でつかむことが第一歩です。
手元の書類で遺産のおおよその総額が見えてきたら、相続税かんたんシミュレーターに入れてみると、相続税の概算が数十秒で確認できます。
税額が0円でも申告書の提出は必要
ここまでで、配偶者の税額軽減を使えば「1億6,000万円か法定相続分相当額の多い方」まで相続税がかからないことを見てきました。
「それなら、税金がかからないのだから何もしなくていい」。
そう思った方は、少し待ってください。
実はここに、多くの方がはまる落とし穴があります。
その前に、ここで何度も出てくる「申告」という言葉を確認しておきます。
相続税の申告とは、亡くなった方の遺産がいくらあったか、誰がどれだけ相続したか、相続税がいくらになるかを計算してまとめ、税務署に書類を提出する手続きのことです。
確定申告をしたことがない方にはなじみが薄いかもしれませんが、「税金の計算結果を税務署に届け出る作業」だとイメージしてみてください。
「非課税なら申告しなくていい」が最大の落とし穴
配偶者の税額軽減は、申告書を提出して初めて使える制度です。
税額が0円になる場合でも、相続税の申告書を提出しなければ、この軽減そのものが受けられません(国税庁タックスアンサーNo.4158)。
「税額がゼロ=何もしなくてよい」ではない、という点が、いちばん見落とされやすいところです。
なお、相続税の申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。
「まだ時間がある」と感じていても、書類の収集や遺産の把握には想像以上に時間がかかることがあります。
税額が0円でも忘れてはいけない2点
- 配偶者の税額軽減は、税額が0円になる場合でも相続税の申告書の提出が必要(国税庁No.4158)
- 申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内
「遺産が少ないから関係ない」も要注意
相続税には、配偶者の税額軽減とは別に「基礎控除」という仕組みもあります。
基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算され、遺産の総額がこの金額以下であれば、そもそも相続税自体が発生しません。
つまり、「相続税がかからない」という状況には2種類あります。
基礎控除の範囲内でそもそもかからないのか、それとも配偶者の税額軽減で税額がゼロになるのか。
前者であれば申告は不要ですが、後者の場合は申告書の提出が必要です。
基礎控除の仕組みそのものについては、相続税はいくらかかる?0円になる基準と計算方法を解説で詳しく整理しています。
申告が必要か迷ったら税理士に確認する
申告が必要かどうかの判断は、遺産の総額・家族構成・誰がどれだけ相続するかによって変わります。
「うちはどちらに当たるのか」が気になった方は、税理士の無料相談(電話・LINE)で確認するのが確実です。
自分だけで判断して誤った方向に進むより、早い段階で専門家に聞いてしまう方が、結果的に手間も不安も少なくなります。
二次相続まで考えると分け方が変わることもある
配偶者の税額軽減を使えば、多くの場合は相続税がかからないか、大きく抑えられることがわかりました。
では、配偶者がすべての遺産を相続してしまえばいいのでしょうか。
実は、そう単純ではありません。
二次相続とは配偶者が次に亡くなる相続
夫婦のどちらかが先に亡くなったときの相続を「一次相続」、そのあと残された配偶者が亡くなったときの相続を「二次相続」と呼びます。
一次相続では、配偶者の税額軽減によって配偶者の相続税がゼロになることが多くあります。
ところが二次相続では、配偶者本人がすでに亡くなっているため、この制度は使えません。
子どもなどの相続人だけで遺産を分けることになり、配偶者の税額軽減という大きな非課税枠がない状態で相続税を考えることになります。
一次相続の分け方が二次相続の負担に影響する
そのため、一次相続で「配偶者にすべて寄せて今回の税金をゼロにする」という分け方が、二次相続では子どもの負担を大きくしてしまう、というケースもあります。
「子どもに多く渡した方が得」とも「配偶者がすべて受け取る方が得」とも、一概には言えません。
残された配偶者の生活を守ることと、将来の税負担を抑えることのバランスをどう取るかは、ご家庭ごとの判断になります。
特に、遺産の総額が大きいご家庭や、配偶者自身がもともと多くの財産を持っているご家庭では、二次相続の影響が大きく出やすいといわれています。
二次相続で押さえておきたい点
- 二次相続(残された配偶者が次に亡くなる相続)では、配偶者の税額軽減は使えない
- 一次相続で配偶者にすべて寄せると、二次相続で子どもの負担が増えることがある
具体的な分け方の判断は税理士に相談する
二次相続まで見据えた分け方は、遺産の内容・家族構成・それぞれの生活状況といった、いくつもの要素が絡み合います。
一般論でお伝えできる範囲には限界があり、具体的にどう分けるのが良いかの判断は、税理士に相談して決めるのが確実です。
「今は税金がかからないから大丈夫」と安心して手続きを終える前に、将来のことも含めて一度確認しておくと、あとで後悔するリスクを減らせます。
配偶者の法定相続分を確認して無税の範囲を見比べよう
この記事では、相続税の配偶者控除(正式名称は配偶者の税額軽減)について、言葉の意味から順番に整理してきました。
この制度は、所得税の配偶者控除とは別の、相続税に固有の仕組みです。
非課税の上限は「1億6,000万円か配偶者の法定相続分相当額の多い方」で、その割合は家族構成によって変わります。
そして見落としやすい点として、税額が0円になる場合でも申告書の提出が必要です。
まずは、家族構成から配偶者の法定相続分の割合を確認し、おおよその遺産の総額と1億6,000万円を見比べてみてください。
「うちは無税の範囲に収まりそうか」の見当がつけば、この記事の役割はひとまず果たせています。
一方で、実際の税額計算や申告要否の最終的な判断、二次相続まで見据えた分け方は、個別の事情によって変わります。
「あなたの相続税は○円です」「申告は不要です」といった断定は、税理士でなければ行うことができません。
らくサポでは、電話・LINEから相続税を専門とする税理士への取り次ぎを行っています。
「相談が必要なレベルか分からない」という段階でも、気軽に問い合わせていただけます。
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