相続税の申告書と電卓・印鑑・現金など、相続の書類準備を表す写真

【2026年7月更新】

遺産分割協議書とは何かを、初めて耳にして調べ始めた方も多いのではないでしょうか。

お母さまが亡くなり、実家の土地建物と預貯金をきょうだいで分けることになった。

役所の窓口や身近な方から「協議書が必要になります」と言われたけれど、そもそも何と読む書類なのか、何のために作るのか、誰に頼めばよいのか、手がかりが一つもない。

そんな状態でこのページにたどり着いた方に向けて書いています。

相続のことを調べ始めると、見慣れない言葉が次々に出てきて、何のことか分からないまま読むのをやめてしまう。

そんな経験をされた方もいるかもしれません。

この記事は、そうした専門用語がよく分からないという方に向けても、やさしく解説しています。

最初の章で必要な言葉をまとめて押さえてから、本題へ進みます。

遺産分割協議書(いさんぶんかつきょうぎしょ)とは、亡くなった方が残した財産について、誰が何を受け取るのかを、財産を受け取る人全員で話し合って決め、その結果を書き残して全員が署名・押印した書面のことです。

この書面を作っておくと、実家の名義変更ができるようになり、止まっていた親の口座からお金を引き出せるようになり、相続税が軽くなる仕組みも使えるようになります。

逆に言えば、これがないままでは相続の手続きがほとんど先へ進みません。

そして、この書類は専門家に頼まなくても、ご自分で作ることができます。

決まった様式はなく、書く項目は5つだけです。

この記事では、まず4つの言葉の意味を押さえたうえで、協議書を作ると何ができるようになるのか、実際に何をどの順番で書くのか、そのために何を準備すればよいのかまでを順番に整理します。

読み終えたころには、ご自分の家の協議書の下書きに取りかかれます。

この記事を読んで分かること

  • 遺産・被相続人など4つの言葉の意味
  • 協議書を作ると進む3つの手続き
  • 協議書に書く5つの項目
  • 印鑑証明書と戸籍の準備の仕方

ぜひ最後までお読みください!

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先に知っておきたい遺産分割協議書の4つの言葉

遺産・被相続人・相続人・遺産分割協議という遺産分割協議書で押さえたい4つの言葉と意味をふりがな付きでまとめた図解

相続の手続きを調べ始めると、「遺産」「相続人」「被相続人」「遺産分割協議」といった言葉がすぐに出てきます。

どれも遺産分割協議書を理解するために欠かせない言葉です。

ここでいったん立ち止まって、4つの意味をまとめて押さえておきます。

言葉ひとことで言うと
遺産亡くなった方が残した財産のすべて(借金も含む)
被相続人亡くなった方のこと(財産を残した側)
相続人財産を受け取る人(子や配偶者など)
遺産分割協議相続人全員で分け方を決める話し合い

「遺産」とは亡くなった方が残したすべての財産

遺産とは、亡くなった方が残した財産の全体を指す言葉です。

預貯金や不動産(土地・建物)、株式などのプラスの財産だけではありません。

借金やローンなどマイナスの財産も遺産に含まれます

「遺産はプラスの財産だけ」と思われがちですが、借金も含めて引き継ぐのが原則です。

「被相続人」は亡くなった方、「相続人」は受け取る人

この2つは1字しか違わないため、読み間違えやすい組み合わせです。

被相続人(ひそうぞくにん)は、亡くなった方。

財産を残した側の人を指します。

相続人(そうぞくにん)は、財産を受け取る人。

子や配偶者などがこれにあたります。

たとえばお母さまが亡くなった場合、被相続人はお母さまです。

財産を受け取るきょうだいが相続人にあたります。

書類や手続きの説明で「被相続人」という言葉が出てきたときは、亡くなった方のことと読み替えると迷いません。

「遺産分割協議」は相続人全員での話し合いを指す言葉

遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を話し合うこと、その話し合いの場や過程そのものを指す言葉です。

「協議」は「話し合い」と同じ意味です。

電話でも対面でも形式は問いませんが、相続人が1人でも欠けた状態で行った話し合いは、法律上、有効な協議として認められません。

相続人が全員そろって話し合い、全員が納得して合意することが前提になります。

「遺産分割協議書」は話し合いの結果を書き残した書面

遺産分割協議書とは、遺産分割協議(話し合い)で決まった内容を紙に書き残して、相続人全員が署名・押印した書面のことです。

口頭での合意だけでは、法務局や金融機関など手続きの相手方に「全員が納得して決めた」と証明することができません。

書面にすることで、はじめて第三者に示せる合意書類になります

4つの言葉のつながり

  • 亡くなった方(被相続人)が残した財産(遺産)を
  • 受け取る人(相続人)全員で話し合って(遺産分割協議)
  • その結果を書き残したもの(遺産分割協議書)

この流れを頭に置いたうえで、次の章から協議書そのものの中身に進みます。

協議書は合意内容を法務局や銀行に示す書類

遺産分割協議書は相続人全員で分け方を決め、書面に書き残し、全員が署名して実印を押すという3段階の流れをまとめた図解

言葉の意味が分かったところで、この書類がどういう性質のものなのかを、もう少し具体的に見ていきます。

分け方は相続人の話し合いで自由に決められる

遺産をどう分けるかは、相続人同士の話し合いで自由に決めることができます。

民法907条は、相続人はいつでも協議によって遺産の分割ができると定めています

法定相続分(民法で定められた相続の割合)どおりに分けなければいけないわけではなく、全員が納得すれば、どのような分け方をしても構いません

たとえば「実家の土地は長女が受け取り、預貯金は次女が受け取る」といった分け方も、全員が合意すれば有効です。

口約束のままでは法務局や銀行に示せない

話し合いの形式は法律で定められていません。

電話でも、直接会って話し合っても、相続人全員が合意していれば協議は成立します。

ただし、口頭での合意だけでは、手続きの相手方に「全員が納得して決めた」と証明することができません。

法務局は不動産の名義変更(相続登記)の申請を受け付ける際に、相続人全員の合意内容を示す書類を求めます。

金融機関も、預貯金の解約や払い戻しの手続きで、合意を確認するための書類の提出を求めるのが一般的です。

口頭の合意は、あくまで当事者の間だけで通じるものです

それを書面にして全員が署名・押印することで、はじめて第三者に示せる書類になります。

連絡が取りにくい相続人がいても除外はできない

遺産分割協議は、相続人全員で行わなければなりません。

県外に住んでいるきょうだいがいる、連絡がとりにくい親族がいる、という場合でも、その方を除いて話し合いを進めることはできません。

1人でも欠けた状態で行われた協議は、法律上、有効な合意とは認められないからです。

相続人が誰なのかを正確に把握することが、協議書を作り始める前の大前提になります

相続人が自分1人だけなら協議書は要らない

財産を受け取る相続人が自分1人だけの場合は、話し合いをする相手がいないため、協議書を作る必要はありません。

1人で全ての遺産を引き継ぐことになるので、分け方を決める協議そのものが成立しないからです。

遺言書があって、そのとおりに分ける場合も同じです。

遺言書そのものが分け方の根拠になるため、あらためて協議書を作らずに手続きが進められることがあります。

ただし、遺言書の内容とは異なる分け方を相続人全員で合意する場合は、協議書が必要になります。

協議書を作ると止まっていた3つの手続きが進む

協議書を作る意味は、書類が1枚増えることではありません。

これがあると、それまで止まっていた相続の手続きが動き出します

何ができるようになるのかを、3つに分けて見ていきます。

実家の名義変更(相続登記)ができるようになる

実家の土地や建物がある場合、亡くなった方の名義から相続人の名義に変更する手続き(相続登記)が必要になります。

この申請は法務局に行います。

話し合いで分け方を決めた場合、法務局はその合意内容を示す書類として協議書の提出を求めます。

協議書がなければ、名義変更の申請が受け付けられません

逆に言えば、協議書さえ整えば、実家を自分の名義にして売却や活用の判断ができるようになります

相続登記は令和6年4月から義務になりました

  • 相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する
  • 正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料の対象になる
  • 過料とは、法律上の義務に違反したときに課せられる金銭的な制裁のこと

実家に不動産がある場合は、協議書の作成を先送りにしないほうが安全です。

凍結された親の口座からお金を引き出せる

親の銀行口座は、亡くなったことが金融機関に知られた時点で凍結されます。

凍結された口座からお金を引き出すには、相続の手続きを経る必要があります

金融機関ごとに手続きの方法は異なりますが、相続人が複数いる場合、多くの金融機関では相続人全員の署名や印鑑証明書(役所に登録したハンコが本人のものだと証明する書類)の提出を求めます。

金融機関所定の相続手続き書類に全員が署名する方式をとるところもあります。

「協議書がなければ一切お金を引き出せない」とは言い切れませんが、金融機関が相続人全員の合意を確認しようとすることは共通しています。

複数の金融機関に口座がある場合は、それぞれに手続きが必要になるため、協議書を用意しておくと進めやすくなります。

相続税が軽くなる仕組みが使えるようになる

相続税の申告とは、亡くなった方の財産がいくらあったかを計算して税務署に届け出て、税金を納める手続きのことです。

この申告では、協議書があるかどうかで納める額そのものが変わることがあります。

1つ目は「配偶者の税額軽減」(国税庁タックスアンサーNo.4158)です。

配偶者が相続した財産については一定の金額まで相続税がかからないという制度ですが、申告期限までに分割が終わっていることが条件の一つになっています

仕組みを詳しく知りたい方は、相続税の配偶者控除とは?1億6000万円まで無税になる仕組みと申告の注意点を解説で整理しています。

2つ目は「小規模宅地等の特例」(同No.4124)です。

亡くなった方が住んでいた土地などについて、一定の条件を満たす場合に評価額を大幅に減らせる制度ですが、こちらも申告期限までに分割が完了していることが条件になっています。

分割が間に合わなかった場合でも、「申告期限後3年以内の分割見込書」(同No.4208)を申告期限までに提出しておくことで、後から特例の適用を受けられる制度があります。

ただし、この制度を使えるかどうかや手続きの詳細は、税理士に確認するのが確実です。

協議書があるとできるようになること
法務局で実家の名義変更(相続登記)の申請ができる
金融機関で預貯金の解約・払い戻しの手続きが進む
税務署で配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例が使える

書類が1枚あるかないかで、実家の名義も、手元に入るお金も、納める税額も変わります

次の章からは、その協議書を実際にどう書くのかを見ていきます。

遺産分割協議書は書く項目が5つだけ

遺産分割協議書には、決まった様式がありません。

国税庁も「遺産分割協議書の書式は特に定まっているわけではありません」としたうえで、参考として記載例を示しています。

つまり、次の5つの項目が順番に入っていれば、手書きでもパソコンで作っても有効です

  • 表題
  • 亡くなった方の情報
  • 全員で合意したという一文
  • 誰がどの財産を受け取るか
  • 作成日と相続人全員の署名・実印

用紙の一番上に書くのは「遺産分割協議書」の6文字

用紙の一番上の中央に、「遺産分割協議書」と書きます。

これが書類のタイトルです。

ほかの言葉に言い換える必要はなく、この6文字をそのまま書けば十分です

亡くなった方の情報は氏名・死亡日・本籍・住所の4点

表題の下に、亡くなった方(被相続人)の情報を書きます。

書くのは、氏名、亡くなった日、本籍、最後の住所の4つです。

「被相続人 ○○○○は、令和○年○月○日に死亡した。」という形で書くのが一般的です。

本籍と最後の住所は、亡くなった方の戸籍謄本や住民票の除票(じょひょう)に書かれています。

どちらも市区町村の窓口で取れます。

全員の納得を示すのはたった一文

「相続人全員で話し合い、次のとおり遺産を分割することに合意した」という趣旨の一文を入れます。

一字一句を決まった文にする必要はありません。

全員で協議して合意した、という意味が伝わる文であれば問題ありません

誰が何を受け取るかがこの書類の中心

誰がどの財産を受け取るかを、財産ごとに分けて書きます。

この項目が協議書の中心になる部分です。

「相続人 ○○○○は、次の財産を取得する。」に続けて、その人が受け取る財産の内容を具体的に並べます。

相続人が複数いる場合は、人ごとに同じ書き方を繰り返します。

財産の種類ごとの書き方は、次の章で説明します。

最後に必要なのは作成日と全員の署名・実印

最後に、作成した日付を書き、相続人全員が住所と氏名を記入して実印を押します。

作成日は、話し合いをした日ではなく、最後に押印が完了した日を書くのが一般的です

住所と氏名は、パソコンで作成した書類であっても、相続人全員が自筆で書くのが一般的です。

押す印鑑は実印(じついん)でなければならず、実印とは市区町村に登録してある印鑑のことです

認印では手続きに使えません

財産の書き方は不動産と預貯金の2つを覚えれば足りる

協議書でつまずきやすいのが、財産をどこまで細かく書くかです。

「実家」「親の口座」といった呼び方では、法務局も銀行もどの財産のことか特定できません

財産の種類書き写す情報確認する書類
土地所在・地番・地目・地積登記事項証明書
建物所在・家屋番号・種類・構造・床面積登記事項証明書
預貯金金融機関名・支店名・種別・口座番号通帳またはキャッシュカード

不動産は登記事項証明書が頼りになる

不動産は、登記事項証明書(とうきじこうしょうめいしょ)に書かれている内容をそのまま書き写します。

登記事項証明書とは、その不動産の所在や広さ、所有者が記録された、法務局が発行する証明書のことです

住所として使っている「○○町1-2-3」という表記と、登記に使われる「地番」は違うことがあります。

住所のつもりで書くと別の土地を指してしまうため、必ず登記事項証明書の記載どおりに書きます

証明書は法務局の窓口で取れます。

預貯金は口座を特定できるところまで書き添える

預貯金は、金融機関名、支店名、普通か定期かの種別、口座番号まで書いて、どの口座かを特定します。

金額を書くかどうかは決まりがありません。

亡くなった日以降も利息がつくため、金額を書くとかえって残高と合わなくなることがあります。

「○○銀行○○支店の普通預金(口座番号○○○○○○○)のすべて」という書き方にしておくと、残高が動いても書き直さずに済みます

準備するのは印鑑証明書と戸籍の2種類

協議書を書き始める前に、手配が必要な書類は大きく2種類あります。

どちらも市区町村の窓口で取るもので、平日に窓口へ行けない場合でも、郵送で取り寄せられます

印鑑証明書は相続人それぞれが自分の窓口で取る

印鑑証明書は、協議書に押した実印が本人のものであることを証明する書類です。

協議書だけでは実印が本人のものか確かめられないため、セットで提出して初めて手続きに使えます

印鑑証明書は、相続人それぞれが自分の住民登録をしている市区町村の窓口で取得します。

県外に住むきょうだいがいる場合は、そのきょうだいが自分の住民登録地の窓口で手配することになります

金融機関によっては「発行から3か月以内のもの」を求められることがあります。

一方、法務局が公開している相続登記の必要書類一覧では、印鑑証明書の有効期限の欄は「なし」とされています。

戸籍は亡くなった方の出生から死亡まで集める

もう1種類は、亡くなった方の戸籍関係の書類です。

相続人が誰なのかを確認するために、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(こせきとうほん)と、相続人全員の現在の戸籍謄本などが必要になります。

戸籍謄本は、本籍地(ほんせきち)のある市区町村の窓口で取得します。

転籍(本籍地を変更すること)をしている場合は、複数の市区町村にまたがって取り寄せることもあります。

提出先は法務局・金融機関・税務署に分かれる

完成した協議書は、1部だけ作れば足りるわけではありません。

手続きの種類ごとに提出先が異なるため、必要な部数を用意することになります。

手続きの種類提出先
不動産の名義変更(相続登記)法務局
預貯金の解約・払い戻し各金融機関
相続税の申告税務署

金融機関が複数ある場合は、それぞれに手続きが必要です

協議書は原本の提出を求められる場合もあるため、必要な部数を事前に確認しておくと安心です

相続税の申告があるなら期限は10か月

相続税の申告が必要な場合、申告と納税の期限は「亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」です。

この期限内に、遺産の分割を終えて申告書を税務署に提出することになります。

期限の数え方や過ぎた場合の扱いは、相続税の申告期限はいつまで?10ヶ月の起算日と過ぎた場合の対応を解説で詳しく整理しています。

10か月は長いように見えて、戸籍の収集・協議・書類作成・各窓口での手続きを順番に進めていくと、思いのほか時間がかかります

進め方の順番は次のとおりです。

  • 亡くなった方の戸籍関係の書類を、本籍地の市区町村窓口で取り寄せる
  • 相続人全員の印鑑証明書を、各自の市区町村窓口で取り寄せる
  • 不動産の登記事項証明書と、預貯金の通帳を手元にそろえる
  • 相続人全員で話し合い、5つの項目を順番に書いて署名・押印する
  • 手続きの種類に応じて、法務局・金融機関・税務署に提出する

5つの項目を確認して協議書の下書きから始めよう

遺産分割協議書とは何か、作ると何ができるようになるのか、そして実際に何をどう書けばよいのかが、おおよそ見えてきたのではないでしょうか。

この書類は、相続人全員で決めた分け方を書き残し、全員が署名して実印を押した書面です。

これがあることで、実家の名義変更ができ、凍結された口座からお金を引き出せるようになり、相続税が軽くなる仕組みも使えるようになります。

書き方に決まった様式はありません。

表題、亡くなった方の情報、全員で合意したという一文、誰がどの財産を受け取るか、作成日と全員の署名・実印。

この5つを上から順番に埋めていけば、専門家に頼まなくてもご自分で作れます。

不動産は登記事項証明書のとおりに、預貯金は口座番号まで書き写すところだけ気をつけてください。

進めていく中で、「うちは相続税の申告が必要なのだろうか」「特例は使えるのだろうか」と迷う場面も出てきます。

とくに税額の計算や申告が必要かどうかの判断は、税理士でなければ断定的なアドバイスを行うことができません

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まずは白紙かパソコンを開いて、表題の「遺産分割協議書」の6文字から書き始めてみてください。

下書きが一度形になれば、あとは整えていくだけです。

参考リンク:

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